(演習科目の一部を紹介しています)

2024年度

前期水5・大学院ゼミ「ジャック・デリダ講義録(1991-92年)『秘密に応答責任を負う』」

南大沢キャンパス 5号館504教室にて対面+配信方式
配信=https://zoom.us/meeting/register/tJUvceCrqzsrHtWZtVFotfyCseYmW85K6YVD

ジャック・デリダ(1930-2004)は1991年以降、大主題「責任の問い」のもとでセミネールを実施しました。この大主題は、証言、歓待、偽誓と赦し、死刑、獣と主権者と毎年主題が変奏されていきますが、その初年度は秘密でした。秘密とは何か。秘密は責任の問いといかに結びつくのか。この問いに答えるために、デリダは秘密の意味論をその異なる次元(科学、技術、社会、政治、宗教)を通じて回析します。タイトルにあるrépondre、secretの単語から、ラテン語respondere、ギリシア語crypte、ドイツ語Geheimnisの言語と思想的背景に即して議論が広げられます。まず、文学のフィクシィンにおける秘密をめぐって、メルヴィル、ジェイムズ、ポー、ボードレールが参照され、秘密の効果の主題系が分析されます。第5-8回講義は、既刊の『死を与える』に相当し、パトチュカとキルケゴールが論じられて、秘密と責任に死と贈与の主題が加わります。そして、ハイデガーとフロイトの不気味なものの比較がなされ、好奇心や配慮が主題化されます。本演習では、このデリダ講義録『秘密に応答責任を負う』(Jacques Derrida, Répondre - du secret. Séminaire (1991-1992), Seuil, 2024)の通読を目指します。

各回でデリダが参照する文献は以下の通り。毎回15-20頁程のフランス語を読み進める予定。フランス語の学習経験に合わせて、予習と参加をしてもらえればかまいません。フランス語未経験者でもなるべく理解可能な方式をとります。授業は対面+配信のハイフレックス式を予定しています。

1. ガイダンス
2. 第1回 メルヴィル『代書人バートルビー』、ボードレール「群衆」など
3. 第1回 メルヴィル『代書人バートルビー』、ボードレール「群衆」など
4. 第2回 ボードレール「現代生活の画家」など
5. 第2回 ボードレール「現代生活の画家」など
6. 第3回 ハイデガー「ピュシスの本質と概念について」(『道標』)など
7. 第3回 ハイデガー「ピュシスの本質と概念について」(『道標』)など
8. 第4回 ハイデガー『存在と時間』など
9. 第4回 ハイデガー『存在と時間』など
10. 第5-6回 日本語訳『死を与える』(ちくま学芸文庫)を使用
11. 第7-8回 日本語訳『死を与える』(ちくま学芸文庫)を使用
12. 第9回 マルセル・モース、アンリ・ユベール『供犠』など
13. 第9回 ハイデガー『存在と時間』など
14. 第10回 フロイト「不気味なもの」など
15. 第10回 フロイト「不気味なもの」など

後期水5・院・学部ゼミ「20世紀フランスの思想」


20世紀を通じて、フランスでは哲学や思想の知的探究が、文学や芸術、精神分析、人類学、経済学、歴史学などと交錯しながら展開された。そららの思潮は西欧中心主義的な思想への反省や対抗として現れ、主体や意識、身体、歴史、文明、政治などのさまざななテーマを刷新した。実存主義や構造主義、ポスト構造主義などと表現されるこれらの思潮は世界的に拡散され、応用され、いまでは人文学研究の明示的ないし暗示的なスタンダードとなっている。本演習では、20世紀フランスの思想をオムニバス形式で辿ることでその思潮を概観する。


演習は、フランス語テクストの抜粋の翻訳と分析、各思想家の説明から構成される。抜粋はフランス語で読むが、日本語訳も配布するので、フランス語未修者でも参加可能。
1.ガイダンス
2.Jean-Paul Sartre, L’être wet la néant. サルトル『存在と無』
3.Albert Camus, Le Mythe de Sisyphe. カミュ『シーシュポスの神話』
4. Georges Batailles, Le coupable.ジョルジュ・バタイユ『有罪者』
5. Maurice Blanchot, Le livre à venir. モーリス・ブランショ『来たるべき書物』
6. Roland Barthes, Le Degré zéro de l'écriture. ロラン・バルト『零度のエクリチュール』
7.Claude Lévi-Strauss, Race et Histoire. クロード・レヴィ=ストロース『人種と歴史』
8.Michel Foucault, Surveiller et punir. ミシェル・フーコー『監獄の誕生』
9.Jacques Lacan, Écrit.ジャック・ラカン『エクリ』
10. Jean-François Lyotard, Discours, figure.ジャン・フランソワ・リオタール『言説、形象』
11. Gilles Deleuze, « Désir et plaisir », Deux régimes de fous.ジル・ドゥルーズ「欲望と快楽」
12. Emmanuel Levinas, Totalité et infini.エマニュエル・レヴィナス『全体性と無限』
13. Jean-Luc Nancy, Au ciel et sur la terre. ジャン゠リュック・ナンシー『天上に地上に』
14. Hélène Cixous, Ayaï ! Le cri de la littérature. エレーヌ・シクスー『文学の叫び』
15.まとめ

2023年度

前期水5・大学院ゼミ「主人と奴隷の弁証法とフランス思想」


「主人と奴隷の弁証法」はヘーゲルが『精神現象学』の「自己意識」の章で展開した思索である。支配者たる主人は奴隷を従属させる。主人は享受し、奴隷は労働する。互いにみずからの自立した意識を獲得するために、生死を賭けた闘いが生じる。ただ、主人は自分の存在を奴隷に依存しており、物の生産に携わる奴隷こそが自立しているとも言える。主人と奴隷の優劣は逆転しうるのだ。このくだりはマルクスを感動させ、労働者の解放という着想を与えた。また、20世紀フランス思想において、主人と奴隷の弁証法は、主体間の相互承認の場面として、さまざまな解釈を受けてきた。本講義では、主人と奴隷の弁証法の骨子を学ぶとともに、そのフランス思想への影響と今日的可能性を見定める。



演習は、①Judith Butler, Catherine Malabou, Sois mon corps: une lecture contemporaine de la domination et de la servitude chez Hegel, Bayard, 2010.の読解、②「主人と奴隷の弁証法」に関するコジェーヴ、バタイユ、デリダ、バトラーなどの論考の検討から構成される。

1.ガイダンス
2.「主人と奴隷の弁証法」の解説。Cf. Gwendoline Jarczyk, Pierre-Jean Labarrière, Les premiers combats de la reconnaissance, Aubier, 1987
3.「主人と奴隷の弁証法」の解説。
4. Catherine Malabou, “Détache-moi” の読解。
5. Catherine Malabou,“Détache-moi”の読解。
6. コジェーヴにおける「主人と奴隷の弁証法」
7.Catherine Malabou,“Détache-moi”の読解。
8.Catherine Malabou,“Détache-moi”の読解。
9.バタイユにおける「主人と奴隷の弁証法」
10. Judith Butler, « Le corps de Hegel est-il en forme : en quelle forme ? »の読解
11. Judith Butler, « Le corps de Hegel est-il en forme : en quelle forme ? »の読解
12. Judith Butler, « Le corps de Hegel est-il en forme : en quelle forme ? »の読解
13. デリダにおける「主人と奴隷の弁証法」
14. バトラーにおける「主人と奴隷の弁証法」
15.まとめ 

後期水5・院・学部ゼミ「20世紀フランスの思想」


20世紀を通じて、フランスでは哲学や思想の知的探究が、文学や芸術、精神分析、人類学、経済学、歴史学などと交錯しながら展開された。そららの思潮は西欧中心主義的な思想への反省や対抗として現れ、主体や意識、身体、歴史、文明、政治などのさまざななテーマを刷新した。実存主義や構造主義、ポスト構造主義などと表現されるこれらの思潮は世界的に拡散され、応用され、いまでは人文学研究の明示的ないし暗示的なスタンダードとなっている。本演習では、20世紀フランスの思想をオムニバス形式で辿ることでその思潮を概観する。

演習は、フランス語テクストの抜粋の翻訳と分析、各思想家の説明から構成される。抜粋はフランス語で読むが、日本語訳も配布するので、フランス語未修者でも参加可能。

1.ガイダンス
2.Jean-Paul Sartre, L’Existentialisme est un humanisme.サルトル『実存主義とは何か』
3.Albert Camus, L’homme révolté.カミュ『反抗的人間』
4. Georges Batailles, L’expérience intérieure.ジョルジュ・バタイユ『内的体験』
5. Maurice Blanchot, L’espace littéraire. モーリス・ブランショ『文学空間』
6. Simone Weil, La pesanteur et la grâce. シモーヌ・ヴェイユ『重力と恩寵』
7.Roland Barthes, « La mort de l'auteur », Le Bruissement de la langue : Essais critiques IV. ロラン・バルト「作者の死」
8.Claude Lévi-Strauss, Race et Histoire. クロード・レヴィ=ストロース『人種と歴史』
9.Michel Foucault, Surveiller et punir. ミシェル・フーコー『監獄の誕生』
10. Jacques Lacan, Écrit.ジャック・ラカン『エクリ』
11. Gilles Deleuze, « Désir et plaisir », Deux régimes de fous.ジル・ドゥルーズ「欲望と快楽」
12. Emmanuel Levinas, Éthique et infini.エマニュエル・レヴィナス『倫理と無限』
13. Jacques Derrida, Séminaire : Hospitalité. ジャック・デリダ『講義録:歓待』
14. Hélène Cixous, Ayaï ! Le cri de la littérature. エレーヌ・シクスー『文学の叫び』
15.まとめ