研究室紹介

ゼミの概要


20世紀フランス思想・文学に関する研究教育を実施し、各自の研究テーマに合わせて研究指導を柔軟におこなっています。フランス現代思想、とくにジャック・デリダ、ジャン=リュック・ナンシー、カトリーヌ・マラブーなどの脱構築思想が西山の現在の研究領域になります。

演習ではテーマが設定され、参加学生と多様なテクストの読解がおこなわれます。アクチャルな問題に人文知の視座から考察を加えるために、時事的なテーマにも随時取り組んでいます。東日本大震災後の「カタストロフィの思想」(2012-13年度)、動物論の思潮を踏まえた「人間と動物」(2014年度)、フランスのテロ事件を受けての「テロリズムの精神と歴史」(2016年度)、コロナ禍における「疫病と人文知」(2020年度)などです。

学部・院共通の演習は日本語テクストのみでおこなわれ、大学院演習ではフランス語テクストの精読に取り組む場合もあります。演習の詳細な内容については、「教育活動」「カタストロフィ」の欄に記していますので参照してください。

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(演習での研究成果と連動した論集『カタストロフィと人文学』、『いま言葉で息をするために ウイルス時代の人文知』)

翻訳の実践的指導



西山はこれまで多数の翻訳に従事してきましたが、演習でも思想系テクストの日本語への翻訳の実践的指導をおこなっています。参加学生らと演習で一部を翻訳したテクストが後日出版されることもあります。たとえば、デリダ『獣と主権者』『嘘の歴史 序説』、マラブー『真ん中の部屋』、コイレ「嘘をめぐる省察」、ナンシー&ミショー「さまざまな形への欲望」などです。


また、西山は、本学学生に限らず、他大学の院生も含めて、若手研究者の翻訳活動への支援をおこなってきました。若手を共訳者として翻訳の機会が多数設けられてきました。その成果は本学紀要『人文学報』への掲載、あるいは一般書として公刊されています。たとえば、ロレッド『ジャック・デリダ 動物性の政治と倫理』、フッセル『世界の終わりの後で』、アリザール『犬たち』、ビュルガ『猫たち』、エスティエ「ウエルベック批評の十年」など、のべ60本ほどです。

国際的な研究教育活動



西山はかねてから国際的な研究教育を重視しており、自分のフランス語と英語が通じる限り、世界各地で活動を展開してきました。とりわけ、パリの国立東洋言語文化大学(INALCO)、レンヌ第二大学、ブルガリアのソフィア大学とは研究教育交流の実績があります。ゼミでも、海外からの招聘教授による国際セミナーを随時組み込んできました。たとえば、ジゼル・ベルクマン、ジェローム・レーブル、パトリック・ロレッド、ダリン・テネフ、デンニッツァ・ガブラコヴァらです。

フランスでの研修



春休みに学生らとフランス・パリなどに滞在して、現地で国際交流研修を積み重ねてきました(2018年までで9回、のべ50人が参加)。主なプログラムは、レンヌ第二大学の日本語クラスでの発表、高校での哲学授業の見学、西山の国際セミナーの見学、ブルターニュ地方とパリの視察などです。大学の助成金により、渡航費の補助が出る場合も多いです。濃密で強烈なフランス滞在は参加学生の学習意欲を著しく向上させてきました。また、長期留学に関しては、本学の交換留学を利用することができます。
学生らのフランス滞在記→https://www.comp.tmu.ac.jp/fr/cn2/pg696.html

本研究室への大学院進学を考えている方へ


本研究室は、東京都立大学人文科学研究科フランス文学教室のひとつで、専門分野は思想・文学になります。大学院担当の教員は4名いるので、きわめて少人数の体制で、密接な指導を受けることができます。

フランス文学教室は学部・大学院を合わせても20-25名ほどのごく小さなユニットです。フランス人留学生がたいてい在籍している点は魅力的です。大学院には本学以外の出身者も多いです。学生が少人数なので、希望する研究書を柔軟に購入することができたり、学内の助成金などが取りやすいといった恩恵にあずかることができます。学生室があるので、一人あるいは複数で勉強したり、食事をして歓談したりすることができます。欠点は、人数が少ないため多様性に乏しく、学生同士の交流の広がりが限られてしまうことでしょうか。

人文科学研究科には専門分野ごとに15の教室があり、学生はフランス文学教室に限らず、さまざまな分野の授業を履修することができます。本ゼミ生の傾向としては、哲学、表象文化、英文学などの授業に参加しています。

修士課程を終えて一般企業などに就職する方は多く、これまでは希望者全員が就職を果たしています。さらには、博士課程に進学して、きわめて困難ですが、研究者への道を目指すことも可能です。

社会人の方でも、勉強意欲があれば、修了は可能です。「長期履修制度」を用いて、たとえば修士課程2年分の授業料で4年間在籍可能です。週1日か半日、授業に参加できれば、修了可能です。

本研究室に関心がある方は随時見学可能ですので(水曜16-18時)、連絡をしてください。遠方の方は、リアルタイム配信での見学にも対応します。

連絡先:nishiyama.tmu【at】gmail.com


本研究室に向いている方
・東京の公立大学で研究したい方(東京都の住民は入学料が半額になります)
・小規模な学科、研究室で研究したい方
・哲学科ではなく、フランス文学系のセクションで思想の研究をしたい方
・フランス思想系テクストの翻訳技術を磨きたい方
・国際的な研究活動に力を入れたい方
・勉強意欲のある社会人の方

本研究室に向いていない方
・大・中規模な学科、研究室で研究したい方
・東京とはいっても、新宿から40分の僻地ではなく、都心のキャンパスを選好する方

過去の指導実績(一部抜粋)

【修士論文】
「発明としての出来事──ルソーを読むド・マンとデリダ」
「演劇における自己欺瞞と自由──初期サルトルの戯曲と『存在と無』における一考察」
「ジャン=リュック・ナンシーにおけるイメージと表象──『禁じられた表象』『ノリ・メ・タンゲレ』を読む」
「可能性としての倫理──ジャック・デリダの『動物の問い』を通したエマニュエル・レヴィナスの思想読解」
「ジャック・デリダの現象学的存在論──フッサール、ハイデガーとともに」
「ミシェル・ウエルベックにおける動物の問題」
「媒体としての詩人──コクトーの『オルフェ』をめぐる考察 」
「フランソワ・モーリアック『テレーズ・デスケルー』、『夜の終わり』における神の救い」
 以下、フランス人留学生による日本語での修士論文
「フランスと日本におけるライシテの歴史的・社会的な比較」
「東京、パリ、ニューヨークの3都市における鉄道網の発達比較——東京の電車、地下鉄はモデルになれるか」
「フランスと日本の対アフリカ政策史」
「フランスと日本で働く女性が遭遇する障害の比較」
「日本における犯罪と外国人をめぐる問題」

【卒業論文】
「ジュール・ヴェルヌ『80日間世界一周』と当時の社会」
「オスマニザシオンによるパリの変化とその影響」
「フランス共和国の標語における「博愛」についての考察」
「ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』における夢想による空間の想起と死の関係性について」
「カミュ『異邦人』における色彩描写の重要性」
「暴力の連鎖から脱するための非暴力と愛」
「サミュエル・ベケット『名づけえぬもの』から見出す言葉の可能性」
「パラノイド・アンドロイド――ミシェル・ウエルベック『ある島の可能性』における現代性」
「フランソワ・モーリヤック『愛の砂漠』における”砂漠”とは?」
「ジョルジュ・バタイユの『エロティシズムと死』について」