まちづくり技術を生かした地域ブランディング研究

地域をブランド化することで観光振興や特産品等の販売つなげることをめざす地域ブランディングは、各地で取り組まれる一方で成果の出しづらい施策である。特に、多様な主体が水平的関係で存在する「地域」において、行政等が作成した地域ブランドコンセプトを地域に浸透させ、地域の事業者が活用する状況をつくる「インナー・ブランディグ(インターナルブランディング)」は大変難しい。まちづくり分野の技術としての合意形成方法や地域内コミュニケーション方法の視点から、このインナーブランディグの方法を研究しています。

2021 ストック型観光行政の政策としての地域ブランディング

 
日本都市センター主催で座長を務めさせていただいた都市自治体におけるツーリズム行政―持続可能な地域に向けて―において、
「第2 章 消費されない観光価値を生むストック型の観光行政へ」の代表的取り組みとして、地域ブランディングを取り上げて、2018〜2020までの事例を紹介しています。
2章 ダウンロード 

2020 国分寺「こくべじ」生産者、販売者、流通者の連携による農産物ブランディング

 
修士論文の成果です。
多品種少量生産や近郊流通の特徴を持つ都市農業における農産物ブランディングでは,農作物に関わる生産から消費までの地域内事業者の連携による地域ブランディングの手法が効果的であるとの仮説に基づき,東京都国分寺市の「こくベジ」事例をケーススタディとして調査した。その特徴は,第一に,これまで盛んに行われてきた農業振興施策や市民活動が生んだ意識や担い手が基盤となり,そこに広報宣伝を得意とする行政部署が関与した事業となったことで,包括的な農産物を対象としつつも,多くの関係者の理解と共感が得られ浸透しやすいブランド戦略の特徴を得たこと,第二に,農家と飲食店をつなぐ農産物配達人を担い手とする継続的なコミュニケーションや,行政主導によるマルシェ等 イベントの定期開催が,とくに飲食店側の意識変化や新たな関係構築,および地域内でのブランド認知の拡大につながっていたことである。これらは地域ブランディングで重要とされる地域内ブランディングを推進する特徴であった。 
観光科学14号 09甲田修論.pdf

2017 〜2019青梅ブルー

 

事業者等の自発的利用を狙うインターナル・ブランディング 

東京都青梅市商工観光課と観光協会(5つ)や地元事業者等が、おうめ! 観光戦略創造プロジェクトの一環として取り組んだ地域ブランド「青梅ブルー(Ome Blue)[1]」は、地域の事業者等のより自発的な活用によるインターナル・ブランディングを狙った仕組みを構築している。青梅の「青」や吉野梅郷で有名な青梅の「梅の花」を形どり、伝統の織物「青梅縞」の藍色をシンボルカラーとした名称とロゴデザインや、まちの様々な資源や歴史の象徴としてBlueを語るコンセプトは、地元の多くの人が使いたくなり共感できることを意図したものである。また、利用申請の必要もなく公式ホームページからそれらをダウンロードできる(図5)。これにより、青梅に関わるすべての人に自由な発想で、生活や事業の中に青梅ブルーを取り入れてもらい、訪れる観光客が青梅ブルーを随所で体感し、地域としての一体感を演出することで、青梅ファンを醸成してくのがが狙いである。また、事業者等が利用したことを行政が担う事務局に報告したり、事務局が地域内やSNSのハッシュタグ等で発見すると、フェイスブックページや公報などでPRをしてもらえるという仕掛けになっている。

OmeBlue公式ホームページ

2015

 
本研究は、観光まちづくりの推進のために、地域の多主体で取り組むボトムアップ型の地域ブランディングの方法、地域の自然・文化環境資源や地域の人との交流体験をより重視する「環境・交流・特産物の3分野を統合した地域ブランディング」の方法を構築することを目的としている。2013-14年度の事例研究の知見を生かし、2014年には社会実験として、あきる野市秋川渓谷圏域に関わる行政、事業者、市民をメンバーとして地域ブランディングワークショップを企画・開催し、地域ブランディング憲章やコアイメージ、ステートメントを作成した。また、これらのツールを使って、あきる野市に立地する(株)サマーランドの新設の観光施設計画のアイデアを議論するワークショップを開催した。その結果、2016年4月に、自然と癒しをテーマとしたドッグラン等のアウトドア複合施設「わんダフルネイチャーヴィレッジ」の開園につながった。
 また、この地域ブランディングの理念や進め方は、2015年度に策定中のあきる野市観光推進プラン改定版に取り入れられた。

2014

 
本研究は、観光まちづくりに資する地域の多主体で取り組む地域ブランディングの方法を構築することを目的としている。従来は、特産品のブランディングにとどまることが多い中で、まず、「観光まちづくり」が観光対象とするまちの環境や交流体験という地域資源をブランディングしていると見なせる事例の取り組みを把握し「ブランディング対象の特産物以外への拡大」の可能性を示した。また、企業ブランディングでは、最初に取り組むべきといわれるインナーブランディング(組織内への浸透)を地域ブランディングに応用するため、「地域内の多主体によるボトムアップ型の地域ブランディングの進め方」が重要であると考え、上記事例の経緯を追った。さらに、これらの知見を活かして、社会実験として、あきる野市秋川渓谷圏域に関わる行政、事業者、市民をメンバーとするワークショップを企画・運営し、交流・特産物・環境の3分野統合したボトムアップ型の地域ブランディング手法についてのひとつのモデルを提言し、今後の手法の発展のための論点を整理した。

2013

 
地域をブランディングする取り組みは、企業ブランディングの手法を応用する形で各地で取り組まれていますが、最初に取り組むべきといわれるインナーブランディング(=ブランディングを進める主体内(企業なら企業内)のブランディグ)は、企業ブランディングと地域ブランディングでは大きな違いがある。地域内の行政や市民、事業者といった多主体の合意形成を必要とするからである。この多主体の合意形成の技術はまちづくり分野で培われてきたものであり、本研究は、ワークショップ等による地位の多主体参加によるブランドコンセプトの形成方法や、その活用・協議の方法を研究している。あきる野市秋川渓谷圏の行政、観光事業者、市民とのワークショップを通して、秋川ブランドコンセプトと運用ガイドラインを作成した。

研究一覧

長門湯本温泉観光まちづくりプロジェクト

高尾山地区 観光地マネジメント研究

林業基盤の職人連携による観光まちづくり

ヴェトナム・フエ皇帝陵の構成原理解読とエコツーリズム推進

里山再生✕コミュニティ形成をめざす開発住宅地のエリアマネジメント

テーマ研究一覧

地域観光プランニング〜観光まちづくりの計画技術の体系化

地域観光プランニングカレッジ:観光まちづくり人材教育プログラムの開発

観光まちづくりオーラルヒストリー研究

都市の祝祭空間研究

まちづくり技術を生かした地域ブランディング
 

川原研(大学院)で研究を希望する方へ

  • 受験前に必ず相談しに来てください。(ビデオ会議も可能です)。
  • 観光に関わる簡単な研究計画書をEメールで送付ください。
  • 大学院の合格前に、研究生として受け入れることはしていません(学科方針)。
  • 受験の詳細は観光科学域HPをご覧下さい。夏試験(8月)、冬試験(2月)があります。