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学位論文について


0. 卒業論文とは何か? 

卒業論文は、教員から課題を与えられて執筆する短いレポートとは質的・量的に異なります。卒業論文は、学位認定に関わる重要な学術論文として大学に保管され続けます。卒業論文は、自分の興味関心からテーマや問いを選び出し、自分のために自分の力で書き上げなければならない長大なプロジェクトです。少しでも質の高い文章が完成するように、早めに準備に取りかかって下さい。骨の折れる大変な作業かもしれませんが、じっくりと物事を考え書く力を養うこと、現在の自分の姿を把握すること、学部教育の総仕上げを達成すること、といった点で卒業論文はまちがいなくきわめて貴重な経験になります。

1. 執筆日程

卒論の準備と執筆は以下の日程を参考にして、指導教官と相談しながら、計画的に進めて下さい。

3年次1月:論文指導担当の教員を決定。
3年次春休〜4年次前期学期:論文の構想を練るために、必要な文献を選出し、読み始める。
☞参照する主なテクストについて、登場人物の相関図や概要などを作成。
☞引用箇所を日本語訳とともに抜出。フランス語原文については正確に引用。
☞気になったキーワードや文言についてコメント。どんなにわずかでも自分の意見を書き留めておく。
☞参考文献の拡がりを確認。論文の構成を練る。目次のイメージをつかむ。
4年生7月末:論文中間報告会(1)
学生各自が論文の進捗状況、執筆計画を発表。提出する報告書は、学部生は2000字程度、院生は4000字程度が目安。具体的には指導教員と十分相談し、その指示に従う。
夏休み:参照する主なテクストの読み込みを終了させ、少なくとも9月には本格的に執筆を開始する。すでに書き留めておいたコメントの断片をまとめながら肉付けしていく。
9〜11月:約2/3を執筆し、報告会に臨む。
11月下旬:卒業論文執筆者の中間報告会(2)
12月中旬:残り1/3を執筆して、全体の下書きを終了。加筆修正をしながら洗練させていく。
12月下旬→最初の締切:指導教員に提出し、加筆修正のアドヴァイスを受ける。
1月初旬:日本語・フランス語の要旨を作成。フランス語は校正をグロワザール先生に依頼(1/5日頃提出)。
1月初旬:卒論、修論の提出期限(110日前後。締切厳守)
2月初旬:卒論・修論の審査

分量:卒業論文
「本文」は、引用文(日本語訳)を含め400字詰め原稿用紙換算で50枚以上。「要約」は和文および仏文で作成。和文は原稿用紙2~3枚程度の分量、仏文はA4版に25行で1枚程度。

3. 対象とテーマ

考察する対象を限定し、自分のテーマや問いを見つけること。
フランス語圏文化論教室の卒論なので、フランスに関係するテーマを選定すること。また、扱うテクストや資料にフランス語で書かれたもの(日本語訳含む)が含まれていること。
対象は具体的で限定的だが、テーマや問いは普遍的なものを選ぶとよいかもしれない。

1)文学・思想系の場合、考察する主要な作家やテクストを選ぶこと。
過去の例:「ボードレールにおける匂い」「アルベール・カミュ『異邦人』における色描写の重要性」「フランソワ・ヴィヨンと死」「サミュエル・ベケット『名づけえぬもの』から見出す言葉の可能性」「モリエール喜劇における最後の従僕――ペテン師スカパンと優越感による笑い」「ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』における夢想による空間の想起と死の関係性について」

2)文化系の場合、考察する具体的対象、時代や場所、主要な参考文献を選ぶこと
過去の例:「フランスにおける日本のアニメの受容」「アルザスにおける帰属意識の変還」「マションが意味すること──過去から現在、そして未来への永続に向けて」「オートクチュールの源流クチュリエ、フレデリック・ワースの業績」「フランス社会におけるPACSの役割とその意義」「フランス共和国の標語における「博愛」についての考察」

4. 基本的な論文構成

① 目次
② 序論(前書き)
③ 本論(章別)(第1章,第2章,第3章 etc.
④ 結論
⑤ 書誌(参考文献の表)

5. 引用

引用したテキストや研究書は、必ず本文や注の中で、原文を添えて自分で日本語に訳したうえで、引用符と脚注をつけて、出典を明示する。
翻訳のある作品は日本語訳を利用してもかまわないが、フランス語の引用は原書からおこない、自分で翻訳してみること。引用されたフランス語の原文は注に転写し、日本語訳の書誌情報も記しておく。

6. 脚注の出典表記の仕方
(参考例を示しておきますので、詳しいことは指導教官と相談してください。)

- 和書:
単行本:西山雄二『哲学への権利』、勁草書房、2011年、55頁。
雑誌論文:藤原真実「「恋愛地図」で読む『美女と野獣』──連作的読解の試み」、『人文学報』、466号、2012年、33頁。
- 洋書(書名・雑誌名を斜体に):
単行本:Albert Camus, L’étranger, Gallimard, 1942, p. 100.
雑誌論文:Francesco Vitale, “The Text and the Living: Jacques Derrida between Biology and Deconstruction”, in Oxford Literary Review, Volume 36-1, p. 110.

・ 同じものを2回以上引用する時は、2回目から次のようにする。
- 和書:
西山雄二『哲学への権利』、前掲、60頁。
藤原真実「「恋愛地図」で読む『美女と野獣』」、前掲、35頁。
- 洋書:
Albert Camus, Létranger, op. cit., 1942, p. 110.
Francesco Vitale,The Text and the Living, op. cit., p. 100.

・前回引用したのと同じものを続けて引用する場合、「同前」「Ibid.」だけでかまわない。
- 和書: 同前、60頁
- 洋書: Ibid., p. 100.

7. その他

・資料購入:図書館にない資料は指導教官に依頼して仏文書庫用に購入することができる。「著者、タイトル、出版社」の情報を提出すること。
・事務室には過去の卒論の見本があるので、かならず参照すること。

8. コピー・アンド・ペースト厳禁

自分の意見と比較したり、自分の意見を補う目的で他人の著作物を利用することを「引用」といいます。引用する場合は以下の条件を満たしていないと、「違法な無断転載」になります。コピー・アンド・ペーストは犯罪的行為なので厳禁です。
Cf. 文化庁の解説本「著作権テキスト」(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/text/

1)必要性や必然性がある範囲内で引用する。
引用する箇所は、必要最小限にとどめ、自分のレポートの趣旨と関係がない部分まで引用しないようにします。
2)自分の作品部分が「主」、引用した部分が「従」という関係を維持する。
自分の文章よりも引用箇所の方があからさまに多かったり、主張や結論を自分の文章では行わず、引用の文章に任せてしまったりしてはいけません。
3)引用した部分を「」で括るなどして、本文とは明確に区別する
自分の文章と引用、または異なる箇所からの引用が一目でわかるようにしておきます。
4)出所(出典)を明示する
本文中の引用箇所の近くに記述するか、本文の外に脚注をつけるなどして出典を明記しておきます。

9. 卒業論文の評価基準

1)問題設定
自分なりの問題やテーマを設置し、その意義や重要性を明確にしているかどうか。
2)論文構成
問題設定から適切な資料収集、資料の的確な読解と分析、結論の呈示まで、論理展開が明快で、不整合や飛躍がないかどうか。
3)日本語能力
誤字脱字や意味不明の表現がないかどうか。指定された書式に従って、適正な形式で書かれているかどうか。
4)フランス語能力
原文を引用し読解し、自分なりに日本語訳を練り上げることで、適切なフランス語能力に到達しているかどうか。
5)分析と批判の能力
たんなる文献・資料の内容報告や要約に終わらず、自分の意見や分析が少しでも表明されていること。先行研究を踏まえた上での独創性があればなおよい。

近年の論文題目

博士論文

「レヴィナスのエコノミー――正義と慈愛のあいだ」
「ミシュレと生命科学――歴史・大地・科学」
「ギョーム・ポステル『世界の驚異』(1553年)研究――東西インドの発見と万物復元」

修士論文

「ジャック・デリダの現象学的存在論──フッサール、ハイデガーとともに」
「モリエール喜劇における召使の役割について」
「ミシェル・ウエルベックにおける動物の問題」
「媒体としての詩人 ── コクトーの『オルフェ』をめぐる考察 」
「フランソワ・モーリアック『テレーズ・デスケルー』、『夜の終わり』における神の救い」
「ルイ=フェルディナン・セリーヌ、コペンハーゲン亡命以前の作品における衣服を表す言葉について」
「Bateau Ivreの中国語訳と日本語訳の比較」
「サン=タマンのカプリスcaprice―その向う見ずな企て」
「デュ・ベレーの詩が奏でる「音」―«Les Regrets»ソネ31番、ソネ79番を中心に―」
「ディドロの『修道女』における視覚的描写―画家のように小説を書くディドロ―」
「フランスにおけるテケリ・イムレの表象について(1686~1803)」
「『スワンの恋』の先行テクストとしての『つれない男』について」
「コレットと第二次世界大戦」 
「エミール・ゾラの『労働』についての研究」
「譲歩の副詞、«quant même»の意味的価値について」
「『無給の殺し屋』におけるイヨネスコのイデオロギー批判について」
「「場所」と「土地」の詩学―1960年代のルネ・シャール」
「トマ『トリスタン物語』における反復法による心理表現」
「バタイユにおけるヘーゲルの考察」
「黄金の盃と宮廷風恋愛―『ペルスヴァル』834-1304行における王妃グニエーヴル像について」
「『ラモーの甥』における風刺の意味―決定稿の題名、『風刺題名』の多義性」
「ルネ・シャール―初期詩集にみる詩人の蘇生」
「ヴィアンとジャズ、黒人の血」
「シモーヌ・ヴェイユにおける〈力〉と〈権力〉―E.レヴィナスの倫理思想との比較を通じて」
「『告白』:読者との関係から考察したルソーについて」
「ドゥニ・ディドロ『私生児』の形式について―演劇と小説のあいだで―」
「〈孤独と交流〉メルロポンティーの身体性に関する試論」
「プルーストとワット」 「ポール・ヴァレリー『テスト氏との一夜』の方法」

卒業論文

2013年度
「フランス社会におけるPACSの役割とその意義」
「日韓翻訳を通して見る『プチ・ニコラ』の世界──子どもには夢を、大人には郷愁を」
「フランス共和国の標語における「博愛」についての考察」
2012年度
「アルザスにおける帰属意識の変還」
「マションが意味すること──過去から現在、そして未来への永続に向けて」
「オートクチュールの源流クチュリエ、フレデリック・ワースの業績」
「ジョルジュ・バタイユの『エロティシズムと死』について」
2011年度
「サミュエル・ベケット『名づけえぬもの』から見出す言葉の可能性」
「スラムという詩とフランスの教育問題」
2010年
「モリエール喜劇における最後の従僕――ペテン師スカパンと優越感による笑い」
「フランソワ・モーリヤック『愛の砂漠』における”砂漠”とは?」
「ジャン・コクトー『恐るべき子供たち』における夢想による空間の想起と死の関係性について」
2009年
「大人が読む『星の王子さま』」
「作中人物の死と美――『アドルフ』と『マノン・レスコー』を通して」
「パラノイド・アンドロイド――ミシェル・ウエルベック『ある島の可能性』における現代性」
2008年
「エリック・サティの詩学について」
2007年
「『アドルフ』における愛のあり方とその終焉について」
「テロワーニュ・ド・メリクールとロラン夫人――二人の女性革命家を通して見るフランス革命」
「ボヴァリー夫人について」 「逃走について」
2006年
「インドについて――ピエール・ロティの旅行記『英人なきインド』と現代インドの考察」
2005年
「『なしくずしの死』にみられる「生」と「死」の表現について――「魂」について語ることの意義に関する考察」
「二つの芸術――近代的芸術観と現代的芸術観」
2004年
「アナトール・フランスの自伝的小説――ピエール・ノジェール、思い出の効用」
「スタンダールの〈自我〉の世界――『赤と黒』の中に」
2003年
「アルベール・カミュ『転落』における水のイメージ」
2002年
「『失われた時を求めて』と固有名」 「身体の条件」
「モリエールの喜劇について――場面設定を中心に」 
2001年
「裸の人間――ジャン・ジュネ『泥棒日記』を中心に」
「ディドロの描いたエスキス―美術評論を通して『修道女』を読み直す」
2000年
「『禿の女歌手』におけるコンテキストの錯乱」 「エイハブからリウーへ」
「コンディヤック『人間認識起源論』における認識論の特徴」
「『ジェルミナール』から読みとるゾラの革命観」
1999年
「ジャム論――初期の詩を中心に」 「フランス語の時間表現における提示詞の機能」
1998年
「サミュエル・ベケット『モロイ』における二部構成の意義について」
「スタンダール『パルムの僧院』における近代軍隊と牢獄」
「ミラン・クンデラ『不滅』について」 「フローベール・漱石・シネマ/枠をめぐって」