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自己修復技術

SELF-MAINTENANCE MACHINE

自己修復とは、自身に発生した損傷を自ら修復し,機能する状態に回復できる能力のことを指します。この言葉を始めて耳にされた方もいらっしゃるのではないでしょうか? しかし私たちひとを含めて生体にはこの自己修復の機能が程度の差こそあれ存在している場合が多く、時には驚くような大胆さでこの機能を駆使しているものも見受けられます。例えばカサノリと呼ばれる海藻の一種はその傘のような部分を切除しても、一定の時間が経過するともとの通りに再生してしまうという能力を持っていますし、とかげやいもりなどは切断された手足をも再生することが可能です。またS.F.(ScienceFiction)と呼ばれる分野の小説や映画の世界では、比較的昔からこの能力を有するキャラクターが登場することも珍しくなく、映画「ターミネーター」でアーノルド・シュワルッツネッガーが演じるアンドロイドが自身の損傷を器用に治療(?)するシーンが描かれていたのは記憶に新しいところです。ターミネーターはいわば高度に知能化された機械システムが自己修復能力を発揮するといった一つの例ですが、一般に普及している機械システムを知能化し、自己修復能力を発揮させることが実際に可能であったら… 自己修復に関する研究は、このような議論を行なうことからスタートを切りました。

現代社会において、ひとに対する機械システムの担う役割はより一層重要、かつ切り離し難いものとなり、いまやひとの生活は機械システムの存在なしには成立し難いといっても過言ではないでしょう。このように、高度に機械化された私たちの生活水準は、それ以前のものと比較して非常に高いものになったわけですが、それと同時に機械システムの故障が私たちの社会に対して及ぼす影響もまた非常に重大なものとなりました。例えば都市部の停電に代表されるような大規模な機械システムの故障による影響の大きさは言うまでもなく、交通における機械システムの故障はそれまでに類を見ない大規模の災事を招くこととになりました。また、機械化による生活水準の変化は、再帰的にさらなる技術進歩を加速させる傾向を生み、それによって可能となった大量生産と廃棄の繰り返しという大量消費のメカニズムは、それまで無尽蔵と錯覚されていた一部の地球資源の枯渇といういわば当然の問題を引き起こしました。さらに、破損、老朽化によって使用されなくなった機械の廃棄は、産業廃棄物問題という新たな難題を引き起こし、地球規模的な環境汚染問題へと発展したことは周知の通りです。このような背景のもとで、これまでの生産し、使用することのみを重視されてきた機械システムに対して、それを維持することの重要さが認識されるようになりました。そして、その結果として蓄積された技術、およびその方法論は保全と呼ばれる体系を成すに至りました。しかしながら、近年の急激かつ継続的な社会変化は保全技術に対するさらなる変化を要求し始めています。すなわち,機械システムの大規模化、複雑化はさらに進行しており、それに伴ってその保全作業カ油包する危険性、複雑性は一層上昇しています。この傾向は、実際にその保全作業を実施する人びとに対してより高い安全性を要求することとなり、産業人ロバランスの変化に起因する慢性的な労働力不足の問題と相互的に作用することによって、保全作業の自動化に対する期待を急速に高める結果となっています。これらの社会的な要求に対して、自己修復機械はより耐故障性に優れた機械システムとしてこの問題の解決を目指すものであると言うことができます。

以上のような背景のもと、私たちは保全作業自動化のための一方法論として、機械自らが自己状態の監視、診断、修復を行う自己修復機械(Self-MaintenanceMachine)に関する研究を行い、この研究の成果の一つとして複写画像に関する故障を対象とした商用の自己修復複写機を開発することに成功しました。一般に機械が故障状態にあるとは、その機械が設計時の定められた要求機能を満たさなくなることをいいます。この時要求機能と機械の正常状態、そして故障時の状態の三つを考えると、修復とは故障時の状態を要求機能を発揮することが可能であるような状態に変化させることであると考えることができます。そして従来から行なわれている故障修復の大半は部品の交換等によって故障状態を正常状態に戻すことにより、要求機能を回復しようとするものです。しかしながら、実際には故障によって損失された全ての機械機能は回復できなくても、機械が必ず発揮しなければならない必要最低限な機能(必要機能)は発揮可能であるような状態が正常状態以外に存在し、なおかつ、部品交換等の修復作業を用いなくてもその状態に到達できる可能性が存在します。すなわち機械の状態とその機能との関係は必ずしも一対一対応ではないので、修復の目標状態がその機械の完全な正常状態と同一である必要はなく、故障時の状態に応じて修復の目標状態を選択することが可能です。私たちは従来の修復方法を「属性保全」、後者の修復方法を「機能保全」と呼び、自己修復機械において部品交換等によらない機能の回復を機能保全により実現するという方法を採用しました。

機械が自己修復能力を持つためには以下の4つの基本能力が必要です。

  • 「故障判定能力」
    機械の状態をモニタリングし、正常か故障かを判定する能力
  • 「故障診断能力」
    故障状態を同定する能力
  • 「修復計画能力」
    修復後の状態、および、故障状態をその状態に変化させる修復操作を決定する能力
  • 「修復実行能力」
    計画された操作を実現する能力

本研究ではこの4つの基本能力を有する自己修復機械を実現する方法として、人工知能技術の一分野である「定性推論」に基づく推論技術を開発致しました。

LAST UPDATED: 2005/06/17 (C) 2005 SHIMOMURA LABORATORY