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多様化する利用者ニーズの把握

1.多様な需要にこたえるために

 市民サービスの向上を目的として整備が進められてきた施設種別は,児童館,老人福祉館,青年センターなど利用対象者を限定する施設から,公民館,コミュニティセンターなど全市民を対象とする施設まで様々です.これらの施設はそれぞれ,市民の需要にこたえるため,機能を設定しそれぞれの施設の役割を明確化して,個別に整備されました.しかし,その施設サービスは,需要に対応した機能ではなく「室名」という箱の形で供給され,固定化されています.

 実際に利用者のニーズは時代と共に変化し多様化していくのに対して,従来からの室名といった固定化した類型による空間機能の提供だけで,需要は満たされるでしょうか.地域における生涯学習機能,高齢者サポート,青少年の健全な育成など,地域公共施設に対する利用者ニーズが多様化している今日,施設名称と室名のセットにより個別に整備されてきた公共施設が、これから提供すべき空間機能を,実際に発生している利用者のニーズを整理することによって横断的に捉え直すことが必要となってきています.

2.利用者の需要をとらえなおす

 公共施設を効率的に整備していくためには,その施設に設置すべき諸室名称ではなく,そこで行われる活動を想定して空間を構成する必要があります.そこで,各施設で実際に行われている活動と,利用者が何を求め,何を条件として施設を選んでいるかを、アンケートをもとに整理しました.  施設選択の際,利用者は人数や活動目的だけでなく,それぞれの活動団体の属性,活動内容に応じた個別の選択条件を持って適した空間を選択していることがわかります。例えば,高齢者や主婦が主体となっている団体は,メンバーの家から徒歩で利用できる施設で,使用する部屋の広さや設置されている備品を条件に室を選んでいます.これに対して社会人や学生を主とする団体は,交通機関が多く利用でき,広範囲から集まりやすいことを優先的な選択条件として施設を選んでいることが分かります.また,音楽活動をする団体は,部屋の広さ以上に,その部屋の遮音性,音響のよさを選択条件とし,舞踊を行う団体は,床の材質や壁面に鏡が設置されているかどうかを重視します.

物理的特性によるコミュニティスペースの9類型

コミュニティスペース類型別にみた活動分類との利用対応率

施設利用者の分類

施設利用者の分類

「一番よく使う施設」を選ぶ理由は?

3.利用者に密着したサービス提供のために

 このような実態から,施設名・室名ではなく,空間機能に対して生じている利用者の要求(=空間要求)を整理し,それらを従来の管轄・管理によらない利用実態に基づいたグルーピングに置き換えていくことが求められます.そのためには,公共施設を所有する自治体が,これらの施設を管轄毎の財産としてではなく市民の財産として総合的に管理し,それぞれの施設の状態,空間機能,利用率などを具体的に把握することが重要不可欠です.また,こうした総合的な管理システムを構築することにより,利用者ニーズに密着したサービスを提供できるだけでなく,施設配置の見直し,重複機能の整理,不足機能の補充なども効率的に行えることになります.