学部授業「マクロ経済学」の方針 ■■


授業参考資料 当日までにダウンロードすること ■■■■■■■■

4月11日 構造改革とはなにか
4月18日 データで見る日本のマクロ経済
その他に 「マクロ経済学のナビゲーター改訂版に向けて」を参照のこと

授業の進め方 ■■■■■■■■

 マクロ経済学には二つの大きなとらえ方があると考えられている。一つは市場経済に信頼を寄せる新古典派的な考え方であり、もう一つは政府の介入が経済の安定に不可欠とするケインズ経済学的な考え方である。そしてこの二つの考え方は、さまざまな側面で対立していることが知られている。
 本授業の前半部では二つの考え方をある程度、大胆に単純化して相違点を強調する。しかし現在の日本の状況では、どちらの考え方が正しい、とは一概に言えないのではないだろうか。そこで授業の後半部では消費・投資・金融政策・財政政策について、再検討を行う。本授業の目的は新古典派とケインズ経済学のどちらが正しいか、を学ぶことではない。むしろ単純化されすぎた議論の危険性を学ぶことである。
 こういった意味でマクロ経済学の学習はミクロ経済学や統計学などとは根本的に異なっている。これらの学習では初学者の段階では「確立された正しい考え方」を秩序よく学ぶことになる。しかしマクロ経済学では互いに矛盾した考え方を学ぶため、混乱しがちである。しかし逆に言えば[正しい確立された答え」がないからこそ、判断の基準として異なる考え方を学ばなくてはならないのだと言える。ペニシリンが発見され、結核が根絶された場合、我々のすべてが必ずしも結核のメカニズムを学ぶ必要はない。しかし未だ決定的な治療法のないガンに対して、さまざまな予防法を取捨選択する知識が必要なように、社会の構成員として健全な判断を下すための基礎知識をマクロ経済学は与えるのである。
 マクロ経済学の学習が難しいのは、数式やグラフのためではない。いま日本がとるべき政策について、なぜ合意が得られないのか、さまざまな要因を考慮して総合的に判断する必要があるからである。
 本授業では第I部第II部で準備を行ったあと
第III部で新古典派のマクロ経済体系をクルーソーの寓話などにしたがって学び、
第IV部でケインジアン経済学の標準的ツールであるIS-LM分析などを学ぶ。さらに
第V部で家計や企業の動学的決定の側面から、消費や投資行動を再検討し
第VI部では金融・財政政策の新しい分析
第VII部では開放体系分析
を考察する。後で学習するように、総需要は消費+投資+政府支出+純輸出Y=C+I+G+(NX)に分かれるが、第V部から第VII部までは、このような各需要項目別に再考を行うことになる。
 教科書によっては、新古典派の分析を「長期分析」、ケインジアンの分析を「短期分析」として考察しているもの(たとえばマンキューの教科書)や、新古典派の考え方を独立にまとめて取り上げていないものがあることに注意すること。

教科書と受講の注意 ■■■■■■

脇田成 『マクロ経済学のナビゲーター』日本評論社 2000年6月.

板書の数式等を移し間違えることは、とかく良くあることなので、教科書を買ってノートを確かめたほうがよい。
インターネット上のホームページ (このページの上部)で参考情報を公開するので適宜参照すること。 (配布資料等もそこからダウンロードすること。)
経済学は現実経済の「文法」だと良く言われる。現実経済に興味のない者が、むりやり「文法」だけ学んでも面白くないのは当然である。とにかくマクロ経済学は実践の学問である。いま現実に何が問題になっているのかを知らずして学習はできない。新聞等の経済記事にも注意を向けよう。
ミクロ経済学にせよ、マクロ経済学にせよ、極めてとっつきにくい。単位数を揃えるだけのための受講はやめたほうがよい。十分に自宅学習の時間をとって履修すること。
成績は期末試験(7/12予定 2004年度)のみで評価する。ただし試験問題は授業で取り上げたトピックスに沿って出題するため、授業の出席は間接的には成績に影響する。
中間試験・宿題等は一切行わない。また追試も認めないので、必ず所定の期日に期末試験を受けること。


クイズ ◆ マクロ経済の大まかな数字 (解答は http://www.comp.metro-u.ac.jp/~wakita/um2gd.htm を見ること)

国内総生産 日本の国内総生産   (a. 5000億円, b. 50兆円, c, 500兆円) 総額 ________ 円
GDPは右の個別項目に分かれる 民間消費支出総額 総額 ________ 円
民間投資 総額 ________ 円
政府支出と 総額 ________ 円
貿易黒字 (輸出-輸入) 総額 ________ 円
国民1人当たり名目GDP/OECD諸国で日本は何位 総額 ________ 円
中国の国内総生産   (a. 150兆円, b. 500兆円, c, 1500兆円) 総額 ________ 円
国富 国富 総額と国民1人当たり国富  総額 ________ 円 総額 ________ 円
バブル 土地 91年末ピーク時額と現在 総額 ________ 円 総額 ________ 円
株式 90年末ピーク時時価総額と現在 総額 ________ 円 総額 ________ 円
金融資産 個人金融資産とその中の銀行預金 総額 ________ 円 総額 ________ 円
株式時価総額  総額 ________ 円 総額 ________ 円
財政 公的長期債務 総額(ストック)  総額 ________ 円 総額 ________ 円
金利が5%だとしたら、毎年の金利支払は 総額 ________ 円
財政投融資 総額(ストック) 総額 ________ 円
一般会計税収と国債発行額 年度 総額 ________ 円
消費税総額 総額 ________ 円
公的年金給付総額 総額 ________ 円
銀行の不良債権 全国銀行貸出残高  総額 ________ 円
不良債権  総額 ________ 円
貸出金利水準 ________ %

マクロ経済学のナビゲーター関連 ■■■■■■■■

「マクロ経済学のナビゲーター」 目次とより詳しい概要
「マクロ経済学のナビゲーター」 アップデートされたリンク集
マクロ経済資料集(フレーム付き) 随時更新しています

参考文献 ■■■■■■

 より学習を深めるための参考文献を紹介しておく。近年のマクロ経済学の大学学部生向けの教科書としては、

  1. ジョセフ・E・スティグリッツ著 薮下史郎他訳 (1995) 『スティグリッツ・マクロ経済学』 東洋経済新報社.スティグリッツ入門経済学スタディガイド
  2. N・グレゴリー・マンキュー著 足立英之他訳 (1996) 『マンキュー・マクロ経済学 1 入門篇・ 2 応用篇』 東洋経済新報社.
  3. 井堀利宏 (1995) 『入門マクロ経済学』 新生社.
  4. 吉川洋 (1995) 『マクロ経済学』 岩波書店.
  5. オリビエ・ブランシャール著 鴇田他訳 (1999) 『マクロ経済学上・下』 東洋経済新報社.

 スティグリッツの教科書は現在使われている通常のマクロ経済学の教科書と異なり、大学院レベルのマクロ経済学のイントロダクションとして、また分かりやすい「例」が載っている。
 さらに若干高度だが

  1. ジェフリー・サックス & フィリップ・ラレーン著 石井菜穂子・伊藤隆敏他訳 (1996) 『マクロエコノミックス上・下』 日本評論社.
  2. 西村和雄編 (1997) 『早わかり経済学入門』 東洋経済新報社.(第11章成長と循環: 脇田担当分)
  3. 脇田成 (1998)マクロ経済学のパースペクティブ 日本経済新聞社.

などが最新のトピックスを踏まえたもので薦められる。
 また日本経済のマクロ分析について、統計資料を多用し、有用なものとしてなども有益である。

  1. 黒坂佳央・浜田宏一 (1984) 『マクロ経済学と日本経済』 日本評論社.
  2. 福田慎一・照山博司 (1996) 『マクロ経済学・入門』 有斐閣.

◆ より詳しい概要


Last Update 4/10/2004