前回に引き続き,雑誌「理学療法」(メディカルプレス社)における連載「知覚・認知と運動制御」の内容を紹介します。今回は第7-8回の概要について紹介します。今後の連載予定についても紹介していますのでご参照ください。
「自分が運動を制御している」という意識経験を,運動主体感といいます。論文はこの運動主体感の研究成果に基づいて脳卒中患者の意識経験や,リハビリテーションの考え方について議論されています。運動主体感を説明するモデルとして,比較器モデルと見かけの心的因果理論があることや,強い運動障害を有する脳卒中患者について,運動主体感を形作る情報処理の一部が変容している可能性を示す研究成果が紹介されています。
選択的注意と分割的注意にフォーカスを当て,それぞれの機能がわかりやすく解説されています。膨大な情報の中から重要な情報を選択する機能である選択的注意については,トップダウン制御とボトムアップ制御があることや,選択的注意の範囲・有効視野などの知識が紹介されています。分割的注意については,二重課題(デュアルタスク)を用いられた課題により検証されていること,高齢者における二重課題の成績低下は,注意分割の機能低下というよりは,むしろ注意資源量自体の低下である可能性があることなどの知識が紹介されています。さらに,選択的注意と分割的注意のそれぞれが運動制御にどのように貢献するかについても解説がなされています。
第9回(刊行済):行為能力の知覚と運動制御,桜井良太先生(東京都健康長寿医療センター)& 樋口貴広
第10回:模倣と運動制御,中本浩揮先生(鹿屋体育大学)& 樋口貴広
第11回:予測と運動制御,渡邉諒先生(東京都立大学)& 樋口貴広
第12回:運動イメージと運動制御,池田由美先生(東京都立大学)