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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#609 オンライン研究交流(山縣桃子先生のレクチャー)

樋口研では昨年度より,オンライン環境での様々な研究交流を行っています(リンク先ページ中央部「オンライン研究交流」を参照)。6月16日に,山縣桃子先生(日本学術振興会特別研究員,神戸大学大学院人間発達環境学研究科)をお招きし,「UCM解析の基礎とバランス研究への応用」というタイトルで,90分にわたる話題提供+議論を行いました。

山縣先生は京都大学大学院医学研究科在籍中から,歩行中のバランスの問題をUCM(uncontrolled manifold)解析の観点から記述する研究を行っています。その内容が大いに示唆的であり,今回無理を言ってレクチャーの機会を作っていただきました。山縣先生のご研究成果の一例はこのコーナーでも紹介させていただいています

発表は大きく3セクション構成であり,理論(運動制御理論とUCM解析の原理)解析手法,歩行研究への応用という内容でした。理論編では,運動の自由度問題から始まり,冗長な身体の制御するための協応性の考え方や,UCM解析の考え方が解説されました。解析手法では,初学者にはとっつきにくい数式の意味について,なぜこのような式になるのかの意味を丁寧に解説してくださりました。歩行研究については,山縣先生の研究成果の一端をご紹介いただきました。

私自身が一番感激したのは,解析手法に関するプレゼンテーションです。我々が解析を実践したいという文脈を加味してくださり,数式の個々の要素が何を計算しているのかについて,意味のある情報を付与してくださいました。数式の細部に触れないことで,初学者にフレンドリーなプレゼンにすることは比較的容易ですが,数式そのものを初学者に理解させるためのスキルが秀逸であり,知識としても,プレゼンスキルとしても,多くの学びを得ました。

研究室では,オンライン環境を生かしてこれからも様々な方々と交流をしていく予定です。


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