東京都における外国人家事労働者に関する調査研究

(斎藤みほ:研究班B「移動と適応」)

東京都、特に港区近辺において日本に駐在する欧米人の家庭でベビーシッター、もしくは家事労働者として雇われている東南アジア系の女性たちの雇用形態と生活環境について調査を行った。特に港区にあるA公園は周辺に各国の大使館が立ち並び、その関係者たちが居住しているため、彼らに雇われていると思われる家事労働者、預かった子どもを連れたビーシッターたちの姿がよくみられる。またこうした外国人駐在者をターゲットとした家事労働者派遣会社も港区を中心に展開されている。本調査は、このA公園とその周辺で働く家事労働者たち、外国人家事労働者派遣会社を対象に行った。

今回は、主に家事労働派遣会社に勤めているフィリピン人女性Nさんにインタビューを行った。Nさんからの聞き取り調査をおこなった結果、現在主に東京都において家事労働を行っているフィリピン女性たちの①雇用形態はどのようになっており、雇用主とどのように契約を結んでいるのか(雇用と労働に関する調査研究)②フィリピン人どうしのつながりやコミュニティはどのようになっているのか(社会参加に関する調査研究)、またそれらの情報をどのように手に入れているのかなど、彼女たちの生活圏、相互行為圏を調べることができた。また、そのなかで、区役所などの公共機関が、彼女たちの生活にとってどのように役立っているかという話を聞くことができ、日本の公共機関の在り方についても示唆を得ることができた。

 さらに、Nさんが雇用契約を結ぶ、家事労働派遣会社には、日本人とフィリピン人の家事労働者が勤めているが、家事労働者の需要は主に日本に駐在する富裕層の外国人であり、また彼らにとっては英語を話せるフィリピン人家事労働者がもっとも好まれるということが明らかになった。日本に駐在する富裕層の外国人と、彼らを対象とした家事労働派遣サービス、そしてそこで働くフィリピン人女性たちの関係性や生活圏を継続して調査中である。 

調査地の公園。様々な国籍の子どもたちとその家族、また外国人労働者たちが集う。


公園の近くのスーパーマーケット。店内の掲示板に家事労働や英語教室などの募集、応募の情報が集まる。