NIZについて

こんにちの東京は、さまざまな文化的背景をもつ人々が往来し、働き、住まうグローバルシティとなりつつある。現在、首都圏には74万人の外国人が暮らし、その出身国は200カ国を越えている。東京都にはその半分の37万人が暮らしている(いずれも平成18年度外国人登録者数)。
在留外国人のなかには、日本人の配偶者、就労者、留学生や就学生がおり、また単身者、扶養者など、個々の生活者の社会的属性は多様である。このように広義の〈移民〉と〈外国人〉の人口は増大しつづけており、多文化都市東京の社会文化的組成は、さらに多様化していくことが予想される。そうしたなかで、近年社会問題化している深刻な経済不況にともなう外国人労働者の雇用・就労問題や、在留外国人を対象とするセーフティネットワーク拡充をも視野に入れた個々の生活圏の研究が必要である。
同時に、こんにち介護・看護現場における外国人の雇用や東京で就職を希望する留学生の増加がみられるようになり、〈移民〉または〈外国人〉と地元住民とが、ともに生活者として交流する場や機会が増えており、移民と地域住民、移民どうし(移民の世代間関係を含む)との間で社会的に形成される新しい相互行為圏(NIZ)の研究が必要である。 本研究は、こうした周辺状況に鑑み、様々な文化的背景をもつ人々が生活者として共存する首都東京に内在する課題を明らかにし、解決策を提示しうるあらたな研究拠点の構築をめざすものである。



  • 本研究は、多文化都市東京のなかで人々が自らの生活圏を構築していく過程で各々の文化的属性がどのようにはたらくのかについて、生活史研究のアプローチを主軸とする実態調査をおこなう。
  • そこで得られたデータと知見をふまえ、さまざまな生活圏が重なり合うところに文化的属性をこえる新しい相互行為圏(NIZ=ニュー・インタラクティブ・ゾーン)がどのようなかたちで形成されうるのかを分析し、また将来にどのようなかたちで形成される可能性があるかについて展望する。
  • 大都市生活者による生活圏の構築プロセスに注目するため、従来の移民研究の理論と方法を摂取しつつも、政治経済的側面や法的側面を重視する狭義の移民研究としてではなく、公共人類学の視点にもとづく全体的アプローチによる多文化都市の生活者研究として展開する。よって、移民を受け入れる側の住民もまた多文化都市の生活者であり、研究対象に含む。
  • 以上に加えて、東京から母国に(あるいは海外から東京に)戻った帰還移民の生活実態を調査する。これにより東京における移民の生活史をグローバルな枠組で理解できる。
  • さらに、本研究の成果を土台に、首都大学東京を拠点とする「国際移動研究センター」を設立する。