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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

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#784 第7回日本DCD学会学術集会にて話題提供しました

2024年4月20-21日に,第7回日本DCD学会学術集会が,高槻城公園芸術文化劇場にて開催されました。シンポジウム「不器用さの探求(研究の知見から)」にて話題提供しましたので,その様子を中心に報告します。

私の話題提供では,最近始めたばかりである,捕球(ball-catch)の認知と支援の研究について紹介しました。この研究はもともと3年前に,DCD学会にて「運動が苦手な子にとってのスポーツの意味」というシンポジウムで話題提供の機会をいただいたことで始めました。このため,将来的に支援につながることを念頭に置いています。日本スポーツ心理学会2023年度プロジェクト研究助成「”不器用さ”の克服に資するスポーツ心理学的支援のための基盤研究」の助成を受けていることもあり,研究室として力を入れて研究をしています。

発表の中では,「フライボールを見る際の頭部の動きをVRシステムを使って誘導する試み」について,構想から今後の方向性までを含めて説明しました。また,VRシステムがもつ魅力と限界についても私見を述べました。

シンポジウムではそのほか,井出正和氏(国立障碍者リハビリテーションセンター研究所)と,信迫悟志氏(畿央大学)が話題提供をされました。井出氏は,自閉症スペクトラム症者がもつ問題について,感覚と運動の橋渡しをする脳内ネットワークの主要部分においてGABA濃度が低下しているという考え方について紹介されました。信迫氏は,DCDを内部モデルやミラーニューロンシステムに関わる脳機能の不全と捉える考え方について,それを支える様々な研究成果を紹介されました。

学会では一般発表として,研究室の菊地謙君が,博士論文のデータの一部を発表しました(自閉症スペクトラム症児のケガのしやすさに対する実験的アプローチ)。7分という限られた時間の中で,研究のエッセンスをしっかり発表してくれました。大きな会場での発表経験から,多くを学んでくれたと思っています。

私たちの研究室ではまだDCDをもつ方々を対象にすることすらできていません。これからの努力で,うまく研究を発展させていきたいと思います。



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