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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#716 雑誌「理学療法」(メディカルプレス社)の連載が順調に進んでいます

雑誌「理学療法」(メディカルプレス社)にて,連載「知覚・認知と運動制御」を2年間担当しています。2022年11月14日現在,4つの論文が発表されました。今回は4つの論文の概要,ならびに今後の連載についてお知らせします。

  • 第1回:総論(樋口貴広)

「動きの調整」という観点から,知覚認知と運動制御の諸問題として,本連載でどのような問題を扱うのかについて概観しました。理論的枠組みとして,認知神経科学的な知見に基づいて脳の情報処理を図式化したコンパレータモデルと,生物と環境の相互作用に関する諸問題を扱う生態学的アプローチについても紹介しました。

  • 第2回:視覚と運動制御1:背景の影響(樋口貴広)

物体を手でつかむ場合であれ,歩行中に段差をまたぐときであれ,そのパフォーマンスには対象物(把持するモノや段差)の特性だけでなく,その対象物の背景が有する視覚的特性が影響しうることについて解説しました。背景が影響する理由として,脳が視野内の様々な情報を潜在的に利用していることや,地面や地平線といった背景情報がむしろ知覚を成立させる本質であるという考え方があることについて紹介しました。

  • 第3回:視覚と運動制御2:歩行の制御(樋口貴広)

歩行の制御における視覚の役割のうち,主として安全の管理に対する視覚の役割をまとめました。具体的には,壁のような周辺との距離情報に基づく姿勢の調節,悪路における接地位置の管理,衝突回避の3つの観点から,視覚情報に基づく歩行調節として現在までわかっている情報をまとめました。

  • 第4回:眼球運動・注視点の制御が空間知覚に及ぼす影響(小野誠司先生,筑波大学)

空間を正確に捉えるための注視点・視線行動(Gaze)が,眼球運動と頭部運動の連携によって制御されていることが解説されました。眼球運動特性として,滑動性追従眼球運動(パーシュート),急速眼球運動(サッカード),輻輳・開散眼球運動の特性が解説されました。また,パーシュート中に起こるサッカード(キャッチアップサッカード)が,通常のサッカードとは異なるメカニズムで制御されていることについても開設されました。さらに,大脳皮質後頭・頭頂連合野の一部であるMTSや外側部が,空間におけるGazeの動きに応答する性質をもっている研究成果について解説されました。

  • 今後の連載

第5-7回の連載予定内容と執筆者は以下の通りです。ぜひご期待ください。
第5回  体性感覚と運動制御(板口典弘先生)
第6回 前庭感覚と運動制御(塩崎智之先生)
第7回 意識と運動制御(宮脇裕先生)

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