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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#691 業績報告:半側空間無視者の隙間通過行動に関するケーススタディ(Muroi et al. 2022 Neurocase)

樋口研修了生であり,現在千葉県立保健医療大学にて教育・研究に従事している室井大佑氏との共著論文が,Neurocaseにて出版されました。脳卒中片麻痺者の隙間通過行動に関するケーススタディです。

Muroi D, Saito Y, Koyake A, Yasuda K, Higuchi T. Walking through a narrow opening improves collision avoidance behavior in a patient with stroke and unilateral spatial neglect: an ABA single-case design.
Neurocase, in press, DOI: 10.1080/13554794.2022.2042566.


隙間通過時に無視側をよくぶつける対象者に関する現象観察がなされました。介入として,麻痺側・無視側からの隙間通過を繰り返し経験させると,衝突率が改善しました。重要な発見は,半側空間無視そのものは介入後も改善されなかったということです。つまり,介入がもたらした衝突率の改善は,無視改善以外の理由で起こったと考えられます。論文では,麻痺側への注意が向きやすく衝突管理しやすかった可能性や,繰り返しの運動経験に基づく知覚運動スキルとしての習熟の可能性が議論されています。

精力的に論文執筆を行ってくれるお陰で,室井氏とは修了後も変わらず有益な交流ができています。現在も様々なデータを論文化すべく努力してくれています。成果がでましたら,またこの場でご報告したいと思います。


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