博士後期1年の須田祐貴君が,修士論文のテーマとして行った高齢者研究が,Frontiers in Sports and Active Living誌に掲載されました。大型スクリーン上のVR刺激を使った衝突回避経験が,実環境にも転移することを報告した論文です。オープンアクセスにつき,ご関心ある方はどなたでも原文をダウンロードできます。
Suda Y, Fukuhara K, Sato K, Higuchi T. Improved walking thFrontiers in Sports and Active Livingrough an aperture in a virtual environment transfers to a real environment: introduction of enriched feedback and gradual increase in task difficulty. Frontiers in Sports and Active Living 4:844436. DOI: 10.3389/fspor.2022.844436
助教の福原先生がスポーツ選手の研究用に開発したシステムを,高齢者の衝突回避の練習課題に応用したものです。これまでの樋口研の研究の流れをくむ形で,狭い隙間の通貨行動を対象としています。前任の修了生・近藤夕騎氏が,システムの骨格を作ってくれました(原著論文をリンク)。すでに一定の効果は得られていましたが,VR状で改善した行動が実環境へ転移するという点について限界がありました。
須田君は,VR上のフィードバック情報を充実させること(衝突時のリアリティを高めるための振動刺激,並びに各試行で設定した目標を達成した場合に成功のフィードバックを与えること)や,スモールステップの目標設定でモチベーションを維持することなどの工夫を行いました。その結果,VR環境で行った練習の効果が,実環境にも転移することを確認できました。
5年間の検討により,ようやく,一定の効果を得ることができました。現状,スクリーン型VRシステムには以下のメリットがあると考えています。
・スクリーンの前で行う足踏み+衝突回避行動の経験が,実環境での衝突回避行動にも転移しうる。
・歩行を伴わず,軽負担で衝突回避の訓練ができる
・スクリーン型のシステムは機器の装着負担が少ない。また,VR酔いのリスクが少なく,過去数年の実験でVR酔いを訴えた高齢者はゼロ。
4月からはさらにシステムを拡充し,継続的にスクリーン型VRの効用について検討する予定です。