本文へスキップ

知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#629 総説論文「スポーツ選手の視覚特性:知覚・認知・運動系で“見る”」


雑誌「Clinical Neuroscience」(中外医学社)の2020年6月号に,総説論文を発表しました。研究室の福原和伸助教,鹿屋体育大学の中本浩揮准教授との共著論文です。

樋口貴広・福原和伸・中本浩揮 スポーツ選手の視覚特性:知覚・認知・運動系で”見る”Clinical Neuroscience 38, 720-723, 2020

この論文では,視覚特性におけるスポーツ選手の素晴らしさが,狭義の(感覚機能としての)視覚特性に収まらないという観点から関連研究をまとめました。例えば野球のバッターが高速のボールを眼で捉えるためには,リリース前後の情報からボールの方向を予測し(認知),さらに眼球を適切な方向へ動かすこと(運動)が必要です。また,眼球の代わりに頭部を動かすことでボールを捉える選手もいます。このように,選手が高速のボールを眼で捉えるという能力には,感覚レベルの視機能だけでなく,様々な機能が関わっています。

論文では,スポーツ選手が相手の動きを捉える際に大局的な情報(global information)を利用していることや,視覚情報が一次視覚野に届く時間遅れを補償するために,移動物体を実際よりも遠い位置にあるように錯覚する可能性(representational momentum)について説明しました。

空間移動を伴う競技の場合,動きながら見る能力が求められます。この論文では,動きながら見る能力として,先読み的な視線行動の問題,ならびに視覚情報が環境の把握だけでなく身体の把握にも重要な役割を果たしていることについて説明しました。

この論文の特集号では,スポーツに関わる様々な情報がわかりやすくまとめられています。国内のそうそうたる顔ぶれの先生たちが執筆されています。ご関心のある方は,ゼミ目次だけでもご覧ください


目次一覧はこちら