研究内容
当研究室では、生体微粒子の捕集,計測及び処理に関して、電気工学及び光工学の視点から新たな技術を提案しています。
- 1つ目は、生体微粒子の電気・光捕集技術です。今までにない手軽さで微生物の分離・濃縮を実現していきます。
- 2つ目は、生体微粒子の電気・光計測技術です。今までにない速さで菌種同定、菌数測定、さらには菌の健康管理までも実現していきます。
- 3つ目は、生体微粒子の電気・光処理技術です。今までにない高効率な代謝制御、殺菌・不活化を実現していきます。
将来、これらの研究技術を統合した生体微粒子に対する究極の全自動一括管理システムを構築します。
微粒子捕集に関するテーマ
誘電泳動を用いた菌分離濃縮セルの開発
食品衛生に関する法規制の強化により、細菌検出の頻度は膨大に増加しています。それに伴い、様々な細菌計測法において、分離・濃縮処理の迅速化が必須となります。当研究室では、電気的な処置のみで標的細菌の高速分離・捕集・濃縮が可能なマイクロ誘電泳動セルの開発を行っております。
液中動電現象を利用した機能性微粒子の3次元アセンブリ
最近では、トップダウンとボトムアップの極微細プロセス技術を駆使した高機能複合型デバイスの作製が行われつつあります。そこで当研究室では、誘電泳動および電気泳動を主体とする動電効果を活用した、機能性ナノ粒子の輸送、凝集および固着に関する研究を行っております。
医療に関するテーマ
細胞膜中における放電活性種の影響評価 ―分子モデリングによる統合的数値解析―
現在、大気圧非平衡放電プラズマを利用した様々な医療応用(プラズマ医療)が進められている。本研究室では、プラズマ―生体界面における複雑な相互作用を、分子レベルで数値モデル化し、定量的な評価指標を導出しています。
医療デバイスの開発
患者さんの痛みを軽減する治療デバイスの開発が進行中です。助教である八木は、医療機器メーカーでの実務経験とバイオデザインの手法を通じて、医療現場のニーズを把握しています。この研究では、電気工学を活用し、患者に対する治療のコンセプトを構築しました。さらに、立案された治療アプローチの効果を検証しています。
電気刺激によるがん細胞除去技術の開発
電気工学と医学の融合により、がん治療に新たな展望を提供する研究に取り組んでいます。具体的には、パルス電界の刺激によりがん細胞を効果的に除去する技術を開発しています。このアプローチは、がん治療において副作用を軽減し、高い治療効果をもたらす可能性があります。
研究キーワード
殺菌(sterilization)
病原性や有害性を有する細菌、ウイルスなどの微生物を死滅させる操作。電磁波、温度、圧力、薬理作用などを用いて細菌などの組織を破壊するか、生存が不可能な環境を生成することで行われる。
代謝(metabolism)
生体内の化学反応のことで、体外から取り入れた物質から他の物質を合成したり、エネルギーを得たりすること。同化と異化がある。新陳代謝ともいう。代謝経路としては、解糖系、β酸化、TCA回路、電子伝達系などがある。
電気力学(electrodynamics)
マクスウェル方程式とローレンツ力を基礎にして電磁場と荷電粒子の現象一般を取り扱う学問。
動電学(electrokinetics)
主に電気浸透、電気泳動、誘電泳動といった動電現象に関する学問。
分子動力学法(molecular dynamics)
個々の原子分子の挙動を運動方程式を用いて計算することで、物質系の巨視的な振る舞いを模擬する手法。
プラズマ医療(plasma medicine)
主に、大気圧非平衡プラズマを生体へ直接または間接照射することで、様々な医療効果が発現する。プラズマ医工学へと展開中。
マイクロプラズマ(microplasma)
微小空間中で生じる放電現象。微小性、局所性、反応性に優れており、様々な応用展開が期待される。
誘電泳動(dielectrophoresis)
不均一電場中に置かれた誘電微粒子において、粒子左右に形成される電場強度の差に応じて、誘起双極子が及ぼす力の差が発生し、微粒子に力が作用する現象。