日本におけるタイ人留学生に関する調査研究
 

(小川絵美子:研究班C「移動と獲得)

 2010年度は、主にタイ王国のチェンマイ県において、日本留学経験者の帰国後の生活と、新たな日本留学希望者が日本留学を決め、準備するまでの過程を調査した。また、2011年3月の東日本大震災直後の、ソーシャルメディアを活用した日本在住タイ人の情報共有の実態について調査した。
 2011年度は、日本国内において、日本留学中のタイ人の留学生を対象に聞き取り調査を実施している。昨年度の調査により、留学後帰国した学生が、これから留学する学生に対して東京での生活や学習についてのサポートをしていることが分かっている。また、留学中の学生が、先輩留学生からメールや電話で情報を得たり、ケアをうけている場合についても視野に入れ、今後も調査を行う。さらに、インターネット上に形成されるコミュニティの活動や、ソーシャルメディアによるコミュニケーションにも注目し、調査を行っている。

(写真上)2010年10月14日・15日に開催された、タイ日本研究ネットワークの全国会議(JSN)の様子(於:チェンマイ大学人文学部)。
日本研究を行うタイの研究者、大学院生の研究大会であり、4回目の開催である今年は延べ200人が参加した。2日間にわたって53組の発表が行われた。開会式では、タイでは日本語を専攻する学生は増加傾向にあるが、そのなかで日本研究を行う学生はまだ少ないという声が目立った。

(写真下)チェンマイ大学言語研究所に設置された日本留学・日本語講習会のポスター。
日本は、英語圏に次いで人気の留学先。



(写真上)2010年11月25日に開催された日本留学フェアの様子(於:チェンマイオーキッドホテル)。
日本留学を希望する学生に対し、日本留学試験、奨学金、日本語検定試験などに関する説明会が行われたほか、日本から参加している20の大学の合同説明会が行われた。参加者は主に高校生であり、チェンマイ大学の日本語科からは、教員や学生がスタッフとして参加していた。
熱心にブースを回り、担当者と話し込む学生が見られる一方で、予約不要、入退場自由であったため、資料と記念品を受け取るとすぐに退場する学生の姿もあり、参加者の姿勢は多様。学生の一番の関心は、奨学金の獲得に関する情報であった。日本の文科省による、外国人留学生への奨学金制度は彼らの間でも既によく知られている。