バンコクにおける在日経験ムエタイ関係者に関する調査研究

(小林貴幸:研究班B「移動と適応」)

 2011年3月21日~27日に、タイ王国バンコクにおいて日本での長期滞在経験があるムエタイ関係者の、滞日中および帰国後の人間関係に関する聞き取り調査を行った。
 来日ムエタイ関係者の交際範囲は一般的に狭いといえる。ジム内においては、トレーナーとして交際をするが、親密にはなりにくい。ジム外では、就労先とタイ食材店、飲食店、寺院などが他のタイ人と出会う場所であるが、ほとんど行かないという。他のタイ人と知り合っても交際は浅いようであった。帰国後は、タイの所属ジム内では会長やマネージャーと契約関係によって強く結びつくが、それ以外は知人程度ということであった。親族や出身地の人間関係は極めて希薄であり、その他の友人はほとんどいないという声が聞かれた。  

[来日ムエタイ選手の一般属性]
小学校か中学校を卒業する頃にムエタイジムにプロ選手として所属する。
在日時の身分は選手兼トレーナー(興行ビザ)で、在日期間は1~2年。
現職業はムエタイ・国際ボクシングトレーナーが多い。



  
(写真左)スラム街のジム(バンコク)

現地および日本・イギリスジム関係者の支援で運営。所属練習生の大半は、スラム街出身者で、住み込み、会費無料。練習生は小学校就学齢で加入。同年齢中にプロ選手として試合に出場する。ファイトマネーは、ジム側が受納し、選手にはこずかい程度が支給される。
(写真右)ジムの主任トレーナー

 

(写真左)チャイナタウンにあるジム(バンコク)
華人経営で、極めて裕福なジム。国際式ボクシングおよびムエタイの興行収入、選手マネージメント料、練習生会費、外国へのトレーナー派遣などが収入源。3階建のビルで、1階は練習場、23階は宿泊施設になっている。毎日、朝食と夕食を提供する。

(写真右)ジムのトレーナー(右)

[来日に至る流れの一般例]
来日前には、日本のジム会長とブローカーが交渉を行い、ブローカーからタイの所属ジム関係者を経て本人へと伝わる。
来日中は、日本のジム会長とブローカーが交渉を行い、ブローカーが試合のマッチング、ジムへの派遣、就労の仲介などを行う。


[来日中の報酬の流れの一般例]
雇用主からの労働報酬は、日本のジム会長を経て本人に渡る。

興行主からのファイトマネーは、日本のジム会長からタイの所属ジム関係者を経て本人に渡る。

トレーナー報酬は、日本のジム会長からタイの所属ジム関係者を経て本人に渡る。