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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#778 総説論文「高齢者における知覚・認知と運動制御: 調整力の低下」

2年にわたり雑誌「理学療法」にて続けてきた連載も佳境を迎えています。今回は,私自身で執筆した論文について紹介します。

樋口貴広 「高齢者における知覚・認知と運動制御: 調整力の低下」理学療法(連載講座:「知覚・認知と運動制御」), 41(1),63-72, 2024

この論文のメイントピックは,動きの調整力が加齢に伴って低下していく現象をどうとらえるか,というものでした。論文の前半では,複雑性喪失仮説と呼ばれる考え方を紹介しました。健康な生体から計測した周期的な波形に見られる,微細な変動成分(ゆらぎ)があります。これが加齢に伴って徐々に見られなくなる現象を,複雑性の喪失と呼んでいます。ここでの微細な変動成分が,一般的なバラつきの指標である標準偏差では表現できず,カオスやフラクタルといった,複雑性を表現する非線形力学由来の指標によって表現可能なため,複雑性の喪失としています。論文では,複雑性の喪失仮説や,そこからさらに派生して生まれた適応性喪失仮説などについて解説しました。

また論文の後半では,研究室の研究成果の紹介を紹介しました。大学院生の佐藤和之君が行ってくれた,移動対象との衝突回避予測に関する高齢者の特徴,ならびに須田祐貴君が行ってくれた,障害物回避動作に見られる高齢者のオーバーリアクションの問題について,研究の内容やその意義について解説しています。

ご関心のある方は,ぜひ論文をご覧ください


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