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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#777 第44回臨床歩行分析研究会@名古屋

3月2-3日に名古屋のういんくあいちにて,第44回臨床歩行分析研究会が開催されました。今回私は,教育講演を担当しました。また大学院生の中村高仁君と脇遼太朗が一般発表を行いました。

中村君の一般発表が研究会の大会長賞に選ばれました。その喜びも含め,発表概要を説明します。

今回はタイトルを「歩行分析から見た視覚運動制御」としました。本私たちの研究室では,視覚運動制御(visuomotor control)の理解を目指して歩行の三次元動作解析を行っています。実際,歩行分析は,状況に応じた歩行の調整を生み出す中枢の制御システムを理解する上でも,有用な情報を提供します。講演ではそうした実例として,視覚運動制御を取り上げました。視覚運動制御に関する研究では,視覚入力から運動出力に至る知覚・認知情報処理のプロセスの理解を目指す。講演では,高齢者を対象とした研究事例に基づいて,「視覚運動制御になぜアプローチする必要があるのか」「複雑性・適応性の喪失としての運動」という2つのトピックをお話しました。

この教育講演にはTobiiさんの協力を得ました。アイマークレコーダを使って,歩行中の視線行動を測定する意義や実態について解説しました。私自身が視線行動を初めて測定して20年近くになります。現在は補助的にしか利用していませんが,興味あるスタッフも多く,今後その使用頻度を上げていきたいと思っています。

中村君と脇君は,それぞれ学士学位論文,修士学位論文の成果の一部を発表してくれました。

中村君は,「高齢者の急な方向転換動作における課題の切り替え条件付与の影響」というタイトルで発表しました。タスクスイッチング(task switching)と呼ばれる認知的負荷を加えた形で,健常な高齢者の行動を遅らせたり,バランスを崩させたりする原因となりうることを示唆する内容でした。

脇君は,「歩行中の視覚運動制御特性を評価するVR課題の開発:実環境下での歩行特性との比較」というタイトルで発表しました。歩行路の状況認知と接地・移動管理が求められるマルチターゲット・ステッピング課題を,VR環境下で再現することを目指した研究です。現状までのVR課題構築の状況を報告してくれました。

大会最後の閉会式にて,中村君の発表が研究会の大会長賞に選ばれることがアナウンスされました。大変ありがたい事と思っています。

大会実行委員長である伊藤忠先生(愛知県三河青い鳥医療教育センター)のお声がけで,約15年ぶりに研究会にお邪魔することができました。ここに記して謝意を表します。



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