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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#746 第1回デジタル理学療法研究会学術集会

6月25日に順天堂大学で実施された,第1回デジタル理学療法研究会学術集会に,聴衆として参加しました。研究室では長年バーチャルリアリティ(VR)を用いた研究を行っています。また過去数年にわたり,ソニーグループ株式会社との共同研究により,テクノロジーと認知科学・身体運動科学研究の融合について考えてきました。こうした背景のもと,理学療法全体の問題に対してデジタル技術や情報の活用がどのように議論されているのか,勉強することが目的でした。

効果的なリハビリテーションの実践や評価に関しては,身体活動量の管理に関する話題が多くありました。最近はウェアラブルデバイスとスマートフォンを活用することで,対象者の活動を24時間測定することが可能になりました。これにより,24時間の中で特に活動量が低下する時間帯を特定し,適切な介入をするといった実践が可能になりました。また,ウェアラブルデバイスを装着しているだけで,1か月間の平均歩数が1800歩程度増加したり,体重減少につながるといったことも報告されていました。活動量を可視化することが,活動量増加のきっかけになりうることを示唆しており,興味深く思いました。

企業協賛セミナーの中では,研究室でない場所でも簡単に,素早く歩行計測・評価ができるためのシステムの一例が紹介されました。実験室における研究を主眼に置いているため,それ以外の場面での最新の計測の考え方を知る意味で有意義でした。

このほか,RPA(Robotic Process Automation)により書類業務補助を自動的に行うことで, 1日当たり150分,1年年で30日相当の時間効率化が実現できるといった試算情報もありました。多忙を極めるセラピストの方々に参考となる情報のように思いました。

本学域の同窓生である門馬博さん(杏林大学),そして本研究室の博士号取得者第1号である安田和弘さん(東京保健医療職専門大学)が発表しており,その活躍の様子を拝見することも,楽しみの一つでした。門馬さんのお話を聞くこと自体が大変久しぶりでしたが,教育者としての立場からデジタル化の問題にどう向き合うかについて,ここ最近非常に真剣に取り組んでおられたことが会場中に伝わる内容で,大いに刺激を受けました。安田さんのVR活用事例については,8月の日本体育・スポーツ・健康学会において私が企画に関わるシンポジウムでもお話しいただくことになっています。

会場参加・オンラインの参加でおそらく150名近い参加者があり,多くの方に関心のあるテーマであることを実感しました。次回以降,研究室スタッフがバーチャルリアリティのテーマで発表できる流れを作れればなと思いました。

運営者のおひとりである松田雅弘さんとは旧知の仲です。非常に多忙な中での会場運営に頭が下がる思いです。

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