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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#726 学位論文最終審査発表会

私たちが所属する人間健康科学研究科・ヘルスプロモーションサイエンス学域では,2023年1月23日に修士論文の最終審査発表会,1月27日に博士論文の最終審査発表会が実施されました。Zoomを用いたオンライン形式の発表でした。樋口研究室からそれぞれ1名の発表がありました。二人とも,長い時間をかけて行った実験の成果を,専門外の聴衆にも理解できるよう,工夫して話をしてくれました。

  • 修士論文,飯森義志氏(M2)
    「段差またぎ動作の関節協調性を向上させる方法の検討ーバーチャルリアリティ環境下での動作調整経験ー」


段差のまたぎ動作をおこなうための主要関節の協調性(相補的な連動関係の構築)に着目し,バーチャルリアリティ(VR)環境下での動作調整経験によって,協調性を向上できるかについて検討した研究です。研究室で保有する2面大型スクリーンのVRシステムを用いました。対象者は,歩行速度と同程度の速度で映像が流れ,近づいてくる段差をできるだけできるだけマージンを少なくして避ける(足を高く上げ過ぎない,でもぶつからない)ことが求められました。3つの実験結果に基づき,試行開始後に段差の形状が複雑に変化する条件(すなわち,左右の足を挙げる高さを事前の計画から修正しないといけない条件)で一定の練習を積むと,その後の関節協調性が高まることを報告しました。将来的に高齢者を対象に実験するための基礎知見を提供してくれました。

  • 博士論文,渡邉諒氏(D3,日本学術振興会特別研究員DC2)
    A rule for anticipatory action planning for stepping onto two potential targets
    (2つの潜在ターゲットへのステップ動作における予測的行動計画のルール)
最近の認知科学研究では,人間が複数の選択肢から最善の行動を選択する際には,過去の経験に基づく出現確率や,行動選択により得られる利得の大きさに基づいて判断していることがわかっています。本研究では,バランス維持が重要な全身移動動作においては,選択肢の出現確率・利得よりもバランス保持を優先して行動選択するという研究仮説を,4つの実験に基づき実証しました。上肢リーチ課題で用いられる,”go-before-you-know”パラダイムを,立位姿勢ステップ課題に応用させた点にもオリジナリティがある研究です。研究成果の一部は国際誌で発表されています


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