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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

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#660 徳島県理学療法士会主催研修会

6月20日に,公益社団法人徳島県理学療法士会主催研修会が行われ,講師を担当しました

例年この研修会では,畿央大学の森岡周先生とご一緒させていただております。今年度は,森岡先生が「身体性システム理論」というタイトル,私が「姿勢と歩行の知覚的調節」というタイトルで行いました。昨年度は研修会が中止となってしまいましたが,本年度はオンラインでの開催でした。

森岡先生のご講演では,「自己(私)とは何かをめぐるいくつかの見解」「身体性と狭義のリハビリテーション」「身体性の階層システム」「自由意思の重要性」「身体性と広義のリハビリテーション」という5つのトピックが取り上げられました。お話の中には,自己感について歴史的にどのような議論があるのか,また最近ではどのような考え方がトレンドなのかといった,総説的なお話がありました。また,森岡先生の研究室で行っている行為主体感や身体所有感に関連する研究の概説がありました。行為主体感や身体所有感そのものをターゲットにする研究から,痛みや失行の問題を明らかにするための研究まで,実に多くの研究を紹介してくださいました。

私の話題提供では,歩行の知覚・認知制御を「感覚入力に基づき,状況を適切に判断しながら歩行を調節すること」と定義し,その理解や評価として,①行動評価・行動選択,②行動の迅速修正,③デュアルタスクという3つの観点に整理してお話をしました。その中では,バーチャルリアリティを用いた衝突回避動作の改善などについて,私たちの試みを紹介しました。

今回は森岡先生と私を踏まえた議論の時間がありました。9年間で初めての試みとして試行錯誤の部分もあったかもしれませんが,私としては森岡先生との直接の議論の時間があったことは有益でした。また,オンラインシステムの有効活用として,多くの方にチャットにご協力いただき,双方向のやり取りを実践することもできました。対面形式でなかったことは残念ですが,昨年度の中止と異なり,新しいスタイルでよい交流ができたと思っています。いつもお世話になっております,公益社団法人徳島県理学療法士会の鶯会長,平島先生,近藤先生,その他スタッフの皆様,ありがとうございました。
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