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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

セラピスト向け情報発信ページ

#637 【業績報告】バーチャルリアリティを用いた高齢者の衝突回避行動改善の支援(Kondo et al. in press)

研究室修了生,近藤夕騎氏を筆頭著者とする論文がArchives of Gerontology and Geriatricsで発表されました。

Kondo Y, Fukuhara K, Suda Y, Higuchi T. Training older adults with virtual reality use to improve collision-avoidance behavior when walking through an aperture. Archives of Gerontology and Geriatrics, in press, 2021

VR環境下での障害物回避経験によって,実環境下での衝突回避行動に変容がみられることを報告した論文です。研究室の助教・福原和伸先生のVR技術を生かして実現できた研究です。京都大学・積山薫先生を代表とする科研費(基盤研究S)の助成を受けた研究です。

運動学習という観点で障害物回避を捉えると,ぶつかった際には誤差情報が得られますが,過度な回避動作に対する誤差情報は通常ありません。オーバーに避け続けることは,単にその場の衝突を避けるという意味ではプラスですが,状況に応じて最適な(効率的でバランスを崩すことのない)回避行動を選ぶ能力を維持するという意味では,マイナスの側面もあるのではないかというのが,私たちの研究室の問題意識です。

この研究では,「障害物すれすれの回避動作を練習する機会」をVR環境で設けることの意義を検討しました。VRですから,衝突によるリスクがありません。また,実環境で「すれすれ回避」を意識しすぎることには弊害もありますので,VR環境での練習が,実環境との不連続性という点で良い練習環境なのではないかと考えました。

ベストな結果が出たわけではありませんが,開発のプロセスとしてご覧いただければ幸いです。この研究は現在修士2年の須田祐貴君が引き継いでくれ,さらなる改善に努力してくれています。VR環境での練習を歩行支援について,良い情報提供ができるよう,スタッフ一同努力していきます。


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