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知覚・認知の視点から運動をひも解く 樋口貴広(知覚運動制御研究室)

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#603 バイオメカニズム学会第40回大会

11月30日-12月1日に,バイオメカニズム学会第40回大会が中部大学で開催されました。大学院生3名と一緒に参加してきましたので,学会の様子を報告いたします。

この学会は,工学,整形外科学,リハビリテーション医学,スポーツ科学などの専門家たちが集まった複合科学的な特色を持つ学会です。私にとっては,普段考えている運動制御・学習の問題を,工学系の方々の発想になぞらえるとどのような考え方になるのか,ということを学ぶ機会になっています。
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特に今年は,3つの特別講演で多くの学びを得ました。名古屋大学の平田仁氏は,ニューロリハビリテーションの効果について神経外科医の立場から議論しました。確かに成人でも失われた神経機能の回復は見られるが,それには相当の時間がかかること(5年とか8年とか)を,臨床例に沿って解説されました。

理化学研究所の下田真吾は,動物が未知の環境に対してどう適応するのかという問題に対して,ロボット工学の視点から話題提供しました。多様な環境に適応するためには,局所的な制御機構にコントロールを任せるようなシステムの構築(Tacit learning)が必要だと主張しました。

国立長寿医療研究センターの近藤和泉氏は,高齢者医療におけるロボットの応用事例を紹介しました。フレイルの高齢者を対象としてロボットを用いたバランス練習をすることで,転倒危険性と関連がある運動機能が改善するというデータをご紹介いただきました。また認知症高齢者に対する傾聴ロボットの開発経緯をご紹介いただきました。

私は一般口頭発表として,「バーチャルリアリティ技術を用いた歩行調整力支援システムの構築」について発表をしました。昨年度修了生の近藤夕騎氏が行ってくれた研究です。フロアーの先生方から,調整力を評価する様々なアイディアをご紹介いただきました。

私は現在,この学会の評議員を務めています。学会は現在会員数が450名程度であり,40代以上の先生方の割合が多く,50-70代の先生方も主発表者として多く発表している点に特徴があります。次年度は東海大学平塚キャンパスで開催予定です。多くの方に関心を持ってもらえば幸いです。


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