セラピストにむけた情報発信



科学研究費プロジェクト:シンポジウム@オランダ




2012年9月4日

8月29日から9月2日にわたり,オランダに出張いたしました.

この出張は,私が関わる科学研究費補助金のプロジェクト(代表者:森修司教授,九州大学)のイベントに参加するためのものでした.このプロジェクトでは年に1回,この時期に成果報告会を行います.今年はメンバーである貞方マキ子氏オーガナイザーとなり,貞方氏が所属するDonders Institute for Brain, Cognition and Behaviour(オランダ,ナイメーヘン)にてシンポジウムが開催されました.

シンポジウムの内容はこちらをご参照ください

私はシンポジウムのトップバッターとして,「prospective control of locomotion(移動行動の予期的制御)」というタイトルにて発表をいたしました.

この科研費プロジェクトにおける私のミッションは,歩行中の空間認知の左右差に関する研究を進めることです.今年は最終年度ということもあり,このミッションに特化した発表ではなく,最近の研究活動全体について30分程度の発表をいたしました.

発表の中には,アメリカンフットボール選手ブラインドテニス選手など,スポーツ選手の移動行動に関するデータもありました.Donders Instituteの参加者の皆さんは,概ねこうしたデータに興味を示してくださり,15分にわたり有意義な議論をすることができました.

この中でも特にブラインドテニスの研究については,多くの参加者の方々にとってその存在自体を初めて知った方も多かったため,多くの関心を持っていただけたように思います.

今年はゲストスピーカーとして,古屋晋一氏(Hannover University of Music and Drama)を迎え,「Sensory-motor mechanism of skilled and unskilled piano playing」というタイトルにて発表をしていただきました.古屋氏は著書「ピアニストの脳を科学する」(春秋社)が現在ビッグセールとなっていることでも著名です.

発表ではピアノ熟練者の特性として,キーストロークに対して,重力などをうまく利用して無駄な筋出力をしていないことや,薬指も人差し指のように独立して動かせることなどのデータが紹介されていました.

また古屋氏は現在ハノーバーにて,ピアノ演奏者のジストニア(演奏中に思ったように手が動かせなくなる障害)に関する研究を行っています.発表では,ジストニアの患者が素早いテンポになるほど,熟練者の持つ優れた特性が障害を受けている知見などについて紹介されました.

この科研費プロジェクトは4年間にわたるプロジェクトであり,今年がその最終年であります.このプロジェクトに関わることで,メンバーの方々から非常に多くの刺激を受けました.

特に,このプロジェクトに関わる日本人研究者の英語能力は素晴らしく,ミーティングのたびに,自分自身の英語力を高めたいという強いモチベーションが湧きました.こうした経験が成長の機会を与えてくれたことは言うまでもありません.

プロジェクト代表者の森先生をはじめ,メンバーの皆様に厚くお礼を申し上げる次第です.年度が終わるまであと半年間,さらなる貢献を目指して努力したいと思います.

     
     
     

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