セラピストにむけた情報発信



セラピストとの共同研究の紹介:ブラインドテニス(1)



2009年11月9日

今回は,本年度より科学研究費補助金のサポートを受けて開始した,視覚障害者向けのテニスを対象とした研究のご紹介です.共同研究者として,首都大学東京の理学療法学科(荒川キャンパス)にご所属であります池田由美先生(准教授)および信太奈美先生(助教)をお迎えしました.この他,東京工業大学・博士課程院生の福原和伸氏,および愛知教育大学・修士課程院生の青山裕美氏にも,研究協力をいただいております.

科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究) 「バウンドするボールの聴覚的空間定位:視覚ハンディキャップテニス選手を対象として」(H21~22,代表者:樋口貴広)

今回は,この研究に至る経緯についてご説明し,次回,研究内容についてご紹介したいと思います.

お二人の先生が所属される理学療法学域と,私が所属するヘルスプロモーション学域とは,公式には大学院で同一分野に所属しています.しかしこれは東京都立の4大学が首都大学東京という1つの大学として生まれ変わった4年前からの話であり,実際には活動拠点となるキャンパスが異なるなど,ほとんど接点がないというのが現実であります.

私が首都大にお世話になって以来,セラピストの方々との研究交流を意識しながら,研究活動を続けてきました.にもかかわらず,身内のPT・OT学科の先生方と交流がないという状況を非常にはがゆく感じており,どうにかして有意義な交流をおこなうことはできないものかと,数年前から模索しておりました.

そんな中,ある勉強会でお会いした信太先生との雑談が,1つの転機になりました.信太先生は障害者スポーツに関する豊富な知識をお持ちであり,研究の実践の両面で障害者スポーツに貢献されています.様々な武勇伝をお聞かせいただくなかで,登場した話題の1つが,視覚障害者を対象としたテニス競技(ブラインドテニス)の話題でありました.お恥ずかしながら,信太先生からお話をうかがうまで,ブラインドテニスの存在を知りませんでした.全盲の選手がテニスラケットでボールをラリーするなんて,実際のゲームの映像を見るまで,想像もできなかったのです.

しかし 映像を見た瞬間,ブラインドテニスは知覚運動制御の観点からみて非常に重要な要素がふんだんに含んでいることがわかりました.加えてブラインドテニスは,障害者スポーツの意義・素晴らしさについて研究者の視点から考える上で,とても良い教材になると思いました.そこで,ブラインドテニスの研究を信太先生たちと共同で行うことで,障害者スポーツの研究に新たにチャレンジし,なおかつ,当初の願いでありました,首都大の理学療法士の先生方と有意義な交流をするきっかけとしたいと考えたのです.

研究には信太先生に加え,池田由美先生にもご参加いただいております.もともと信太先生と池田先生は,以前からブラインドテニスの選手に関する研究をおこなっており,それを継続的に発展させつつ,新しい知覚運動制御の要素を加えていきたいと考えました.池田先生は認知運動療法などを中心に活躍されております.池田先生はもともと心理学専攻の出身であるため,研究者と実践家の両面の要素を持っており,現場の問題に精通していない私の意見にも耳を貸しつつ,適切なご指導・サポートをしてくださいます.

科学研究費の補助金が得られる2年間の研究を通して,これまで述べてきたような様々な思いを形にしていければと考えております.

研究内容については,次回ご紹介いたします.


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