セラピストにむけた情報発信



論文の公表と他者からの引用
 



2011年10月24日
今日はいつもと少し趣向の違う内容でこのページを書きたいと思います.

現在私の研究室には,7名の大学院生と2名の研究生(いわば大学院生予備軍)が在籍しています.個々のスタッフが様々なテーマの実験に取り組んでおり,最終的には論文公表できるように努力をしています.

論文を公表するためには,論文審査に通らなくてはいけないため,決して容易なタスクではありません.従って指導教官としても,論文指導に関わる仕事は最も細心の注意を払う仕事の1つとなります.

研究データを論文公表することは,研究者にとっては責務であります.しかし仕事としての一面を除いても,論文公表には非常に多くの意味・喜びがあります.

第1に,自分の名前が論文として世に残ることの喜びがあります.論文公表に至るには,最短でも研究を始めて1年はかかります.論文審査が通った後,初めて雑誌の形式に構成された論文を目にしたときの感動は,何物にも代えがたいものがあります.これまでの苦労が全て報われたような気分にさえなります.

第2に,論文を通して自分自身の考えが多くの読者に発信できるという喜びがあります.特にセラピストの方々にとっては,これまでご自身の主義や主張の及ぶ範囲が,直接担当する患者さんであったり,院内のスタッフであったりしたものが,文字情報として一気に幅広い範囲に及ぶことになります.たとえ読者対象の狭い雑誌に論文を掲載したとしても,最近の優れた文献検索システムのおかげで,興味のある多くの読者にその情報が伝わるチャンスが広がっています.

そして第3に,自分の論文を他者が引用してくれるという喜びがあります.初めて第三者的立場の人から自分の論文が引用された時の喜びは,自分の論文が初めて審査に通った時と似たような喜びがあります.もちろん場合によっては,自分自身の主張が批判的に取り上げられることもありますので,いつでも論文引用が喜びをもたらすわけではありません.ただしこの場合でも,自分の論文が他者の眼に止まっているという事実がとても重要な意味を持ちます.当たり前のことですが,論文は読んでもらうことで初めて,情報としての価値が生まれます.

実際,研究領域においては,公表された論文がどの程度他者から引用されているかという引用回数が,論文のクオリティを評価するうえでの重要な数値情報となっています.

国際誌に掲載された論文が他の論文からどの程度引用されているのかについては,SCOPUSという大変便利な学術情報データベースで調べることができます.

SCOPUSでは,自著論文がどの程度引用されたかという数値情報だけでなく,どの論文によって引用されたかについても,詳細な情報を入手することができます.よってこの情報をうまく活用すると,自分自身の研究に関わる論文の最新情報がいつどの雑誌に掲載されているかを,漏らすことなく常にアップデートできることになります.

このように論文を(できれば英語で)公表することで,情報としての価値が一気に高まるだけでなく,自分自身の情報収集の質さえも一気に変わることになります.

今年度私たちの研究室では,博士3年の安田和弘君と,修了生の藤懸大也君が,国際誌に論文を公表しました.現在も皆,国際誌への論文公表を目指して実験に取り組んでいます.ここで書いた喜びを一人でも多くスタッフが体感できるよう,指導教官としてサポートしていきたいと考えています.



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