セラピストにむけた情報発信



リーチできる距離の知覚判断には大脳運動関連領域の活動が関与する:
fMRI研究(Bartolo 2014 Eur J Neurosci)




2017年10月23日
今回ご紹介する研究は,リーチできる距離の知覚判断に,大脳運動関連領域の活動が関与することを示す研究です。fMRIを用いた研究です。脳波を使った関連研究もこのコーナーで紹介していますので,こちらをご参照ください

Bartolo A Contribution of the motor system to the perception of reachable space: an fMRI study. Eur J Neurosci 40, 3807-3817, 2014

この研究では,バーチャルリアリティ上でカップを呈示し,それがつかめる距離にあるかどうかを,若齢参加者に判断してもらいました。脳活動を比較する対照課題として,カップの色を判断してもらう課題と,ターゲットのカップが左右にある2つのカップのどちらに近いかを判断してもらう課題も設定されました。

これら3つの課題では,提示される視覚刺激は同じであり,何を判断させるかのみが異なります。したがって,これら3つの課題を遂行中の脳活動を比較検討することにより,リーチできる距離の知覚判断に特有な脳活動を明らかにすることができます。

実験の結果,リーチできる距離の知覚判断に特有な脳活動として,前頭-頭頂葉のネットワーク(特に前・後頭頂葉や頭頂間溝)や小脳に強い活動が見られました。特に小脳は,判断が難しく回答に時間がかかった場合に特に強く活動することから,判断のプロセスにおけるカギとなるエリアなのではないかと,著者らは解釈しました。

興味深いことに,こうした領域の脳活動は,カップが手の届く範囲にあった場合にのみ,高い活動を示しました。この点から,手の届く範囲に対象物が入ると,それに対する運動反応が企画される結果として,強い脳活動が見られるのではないかと考えられます。つまり,リーチできるかできないかの判断をしている部位,というよりは,リーチできる場合は運動反応が潜在的に起こっているので,その活動の有無が(どこか別の脳部位にとって??)判断に利用可能,といったことなのかもしれません。


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