セラピストにむけた情報発信



『知覚に根ざしたリハビリテーション』ピックアップその2(第3-4章)





2017年5月29日
書籍「知覚に根ざしたリハビリテーション」についての内容紹介の第2弾です。

第3章 道具や環境の違いにおける身体反応の変化-生活動作に対する介入を中心に(生田純一

作業療法士,生田純一氏(中伊豆リハビリテーションセンター)によるご執筆です。

話題の中心は道具の使用です。日常生活では多くの道具を使用します。道具を巧みに使用できるかどうかが,日常生活動作をスムーズに行うために必要となることから,道具使用に対する介入のポイントや,知覚への考慮について執筆されています。

脳血管障害などの理由で身体に障害を持つ患者さんは,姿勢安定のために過剰に身体を固めるバランス方略を取る傾向が強くなります。その結果,道具から得られる情報に基づいて,身体の動きを柔軟に変化させる方略が阻害されやすいと,生田氏は指摘します。つまり,こうした状態からいかに脱却させるかが,セラピストにとっての重要な課題であるという指摘です。

章の中では,道具の知覚をサポートするための様々な自助具が紹介されています。食事で使用するニューカフ(三本指でつまむ自助具)や,頚髄損傷事例に対して用いた書字用自助具などが紹介されています。また,私個人が研究対象としている隙間通過行動についても,環境に対する適応の機会として具体的な介入の方法が示されています。

第4章 摂食・嚥下機能への外・内か尿からのアプローチ(奥山優子)

作業療法士,奥山優子氏(野洲病院)によるご執筆です。

一般に,摂食・嚥下機能の治療にあたっては,食べる・飲むために必要な,口・頭頚部の機能改善にアプローチすることになります。奥山氏は,そうした基本的理解をベースとしながらも,全身の姿勢制御への配慮が欠かせないと指摘します。全身の姿勢制御の重要性の指摘については,第2章でも指摘されています。

奥山氏の章で特徴的な内容が,「おいしさの知覚」に関する話題です。食事を,単に生命維持に不可欠な行為としてとらえるのではなく,おいしいものを食べたいという前向きの姿勢を作り出すために,おいしさを感じてもらうという視点での介入が必要であると,奥山氏は考えています。

例えば,ベッドに寝たきり状態の人が食事をする際には,ベッド頭部を持ち上げ,患者さんの前にオーバーテーブルを設置して食事をしてもらうことになります。この際,セラピストの視線から見れば適切な位置にテーブルがあると感じても,患者さんからは食事内容を視認できない高さにあることもあります。目をつぶると何を食べているか認識できなくなることからわかるように,目で見て食べ物を認識することは,おいしく食事をするための第1歩となります。

このほか,舌の機能改善として,単に舌をうまく動かすための介入だけでなく,口腔内知覚を高めるために,ビニール手袋の中に入れた様々な形のブロックを,口の中で確かめてもらい,形をあてる,といった介入例が紹介されています。

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