セラピストにむけた情報発信



サッカー選手のけが予防に関する研修会(Football Groove





2017年4月17日
知り合いの理学療法士さんが主宰した,サッカー選手のけが予防に関する研修会に参加し,話題提供をいたしました。この問題に対して私は全く専門ではありませんが,「自分にとって敷居の高いテーマに対して,自分の専門性を生かしてどのように対応するのか」という訓練としては,良い経験をさせていただきました。

私自身の話題提供の内容をご報告する前に,仙台大学の村上憲治先生の話題提供の内容についてご紹介します。

村上先生はまず,FIFAが提供する,サッカー障害の種類(肉離れ,捻挫,打撲など)や,障害が起きた場面や行為に関する統計についてご紹介くださいました。

その中で,障害発生の多くは前後半ともに終盤に起こっていることが示されました。もちろんここには,けがをした選手自体の疲労や集中力欠如といった問題もあると思います。しかし一方で,その選手をディフェンスする選手が,疲労で正攻法ではディフェンスできなくなり,ファール気味のプレーが多くなってしまうこともあるのかもしれない,といった議論が展開されました。

このように考えると,相手ディフェンダーがつかれてきた場面では,オフェンスにとって絶好のチャンスであると同時に,ファールプレイをされやすい場面でもある,と考えることができます。こうしたことを自覚することが,選手の危機察知能力向上につながらないかなと,お話を伺いながら思いました。

私は,「集中できない環境での運動:デュアルタスクの観点から」というトピックを用いて,この問題について話題提供しました。

試合場面では,練習してきた動作を正しく実践するというだけでなく,様々なことに気を配り,自分の動きに集中できない状況で動作を実践することが求められます。こうした状況をある種のマルチタスク場面と捉え,関連する心理学的な知識について解説をしました。

「状況判断に多くの認知資源を導入するためには,運動自体を高度に自動化させるという側面がある(つまり認知を鍛えるのではなく,運動を鍛えることで状況判断力があがる)」,「視野を確保する姿勢をつくることで,状況判断がしやすくなる」,「転び方を覚えるという考え方」について,様々なスポーツの事例や,高齢者の転倒に関する事例から説明しました。転び方を覚えるという話題については,前回このコーナーで紹介した,Rovinobitch氏の研究を紹介しました。

今後もこうした新しい話題に挑戦し,自分の引き出しを徐々に多くしていきたいなと思う次第です。

     


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