セラピストにむけた情報発信



パーキンソン病患者の不安症状と歩行
(Ehgoetz Martens et al. 2015)




2016年1月12日
本年も変わらぬご支援をよろしくお願いいたします。

カナダのWilfrid Laurier大学でAlmeida氏のグループが報告した,パーキンソン病患者に関する研究です。国立精神・神経医療研究センターの近藤夕騎氏にご紹介いただきました。関連論文はこちらをご覧ください

パーキンソン病患者の中には,不安障害の症状を呈するケースが散見されると指摘されています。不安障害の症状は,レボドパ(不足したドーパミンを補充する薬)を投与することで軽減されることが経験的に知られているようです。また,パーキンソン病患者のすくみ足などの症状は,ストレスフルな状況でより顕著だという指摘もあります。

著者らはこうした背景に基づき,ストレスフルな環境におけるパーキンソン病患者の歩行特性を実験室的に測定することにしました。またパーキンソン病患者の歩行特性や不安傾向が軽減するのかについて検討しました。

ストレスフルな環境は,バーチャルリアリティにより作り出しました。あたかも高所を歩いているような情景を,バーチャルリアリティにより作り出し,そこでの歩行特性を測定しました。パーキンソン病患者は事前の質問紙調査により,不安傾向が高い人と低い人にグループ化して,不安傾向の影響も検討しました。

実験の結果は以下のように整理されます。

まず,レボドパの投与により,不安傾向がもともと高かったパーキンソン病患者の不安傾向を軽減させることができました。この結果は,薬投与により不安症状が軽減されるという経験的な知見を支持する結果です。

また,レボドパの投与により,ストレスフルな環境での歩行特性が改善しました。やはりここでも,不安傾向がもともと高かったパーキンソン病患者について,歩行の改善が顕著でした。なおこうした改善は,統制条件として設定した低所での歩行では顕著ではありませんでした。

以上の結果から,著者らは,パーキンソン病患者における不安障害と歩行障害の間には何らかの関連があり,それらは基底核の機能を補う薬投与によりいずれも改善可能であると結論しました。


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