セラピストにむけた情報発信



物体のアフォーダンスを知覚する脳:左半球の優位性
(Proverbio et al. 2013)




2014年12月2日

以前,物体がもつアフォーダンスの知覚を支える脳活動について,脳波を使った時間的特性に関する研究を紹介しました。今回は同じグループの研究者たちが,左半球の優位性があるかどうかについて検証をしたものです。

Proverbio et al.Is there a left hemispheric asymmetry for tool affordance processing? Neuropsychologia 51, 2690-2701, 2013

この研究者たちは,手で操作する物体に特化した脳活動が,特に左の中心前回(left precentral gyrus)や,両側の運動前野に見られることを報告しました。いずれの領域でも左半球に活動が強くみられることから,左半球の活動が優位である可能性が示されました。

操作物体を表象する脳部位は,本当に左半球優位なのでしょうか,それとも,単に右利き者を対象にすると,その対側の左半球の活動が優位になるということなのでしょうか?今回の研究の目的は,こうした疑問に答えることでした。

疑問を検証するために,彼らは呈示する映像刺激を工夫することにしました。

前回の実験では,右手だけで扱う道具を選んで映像として呈示しました。今回はそうした映像に加えて,両手で扱う道具の映像も使用しました。もし左半球の活動の優位性が右手の操作に依存するならば,両手で扱う道具の映像では,左半球優位性が見られないだろうと予想したわけです。

実験の結果,たとえ両手で扱う道具の映像も使用した場合でも,左半球の運動前野が強く活動することがわかりました。従って,左半球の運動前野は,道具の物体操作を支える重要な部位であることが示唆されました。

個々の論文の意義を学ぶことに加え,同一の研究者が研究をどのように積み上げていくのかということからも,多くのことを学ぶことができます。そのような意義を,2つの成果から感じていただければと思います


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