セラピストにむけた情報発信



【業績報告】足刺激のメンタルローテーションは直後に行う立位姿勢制御の動揺量を減少させる(Kawasaki and Higuchi, 2013)

 


2014年1月14日

前回に引き続き,私の研究室に所属する大学院生の業績報告です.博士院生として研究している理学療法士,川崎翼君がおこなった,メンタルローテーション課題と立位姿勢制御に関する研究です.

Kawasaki T et al., Immediate beneficial effects of mental rotation using foot stimuli on upright postural stability in healthy participants. Rehab Res Practice 2013, 890962 (7pages), 2013.

この論文では,足の図形を回転操作するメンタルローテーション課題が,直後の片脚立位姿勢動揺量を減少させる介入として有効であることを,2つの実験を通して報告しました.

第1実験では,約10分間にわたって足刺激に対するメンタルローテーション課題を行い,その直後の立位姿勢動揺量を測定しました.姿勢制御に関わる足刺激を用いることが,ここでのポイントでした.16人の若齢健常者が対象でした.

実験の結果,足刺激を用いた場合には,車刺激(つまり身体と無関連の刺激)を用いた場合に比べて,メンタルローテンション直後の姿勢動揺量の減少の程度が大きいことがわかりました.

第2実験では,第1実験で得られた効果が,足刺激の“ローテーション”という認知活動に依存するのか,それとも足刺激を見ていることに依存するのかを確認することにしました.そのためこの実験では,足刺激が出たらその回転方向に関わらず,素早くボタンを押すという単純反応時間課題を行いました.この課題では,足刺激を見ているものの,ローテーションは行っていません.

実験の結果,足関節のメンタルローテーション課題だけが,直後の姿勢動揺量を減少させることを確認しました.この結果は,姿勢動揺量を減少させる効果は,足刺激をローテーションさせるという認知活動にあるのであり,単に足刺激を見ているだけの効果ではないことを示唆しています.

なおいずれの実験でも,片脚立位の場合のみ介入の効果があり,両脚立位の場合には介入効果はみられませんでした.ある程度難易度の高い姿勢条件でのみ,介入の効果があるのかもしれません.

川崎君は,MRを行うことで運動イメージにかかわる認知活動が賦活され,姿勢制御にも波及効果があったのではないかと推察しています.

MRは誰にでも簡単にできる認知課題です.虚弱高齢者のように,一般的な運動介入が難しい対象者に,姿勢訓練の補助的手段として使えるのではないかと期待しています.

川崎君は4年間にわたりコツコツと実証データを取り続けてくれました.その一つが形になり,指導教官としても嬉しく思っているところです.

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