セラピストにむけた情報発信



号外:福島智氏関連本(ゆびさきの宇宙)




2010年5月18日

前回,全盲ろうの東大教授,福島智氏のエッセイ集についてご紹介しました.

今回は号外として,福島智氏の人生について第三者の視点からご紹介した本を紹介いたします.

生井久美子 ゆびさきの宇宙:福島智・盲ろうを生きて.岩波書店,2009

福島氏が公の場で話をしたりエッセイを執筆したりする際には,いつも自らの主張をユーモアで包み込みます.障害の存在を感じさせないそのユーモア溢れる発言こそ,多くの人が引き付けられる魅力の一つであります.

しかし福島氏の発言の根底にはもちろん,全盲ろうとの想像を絶する戦いのエピソードがあります.また,障害者支援が満足でないということに対する怒りの気持ちもあるように思います.

今回ご紹介する本では,生い立ちから現在に至るまでの福島氏のこうした想いの一端が,第三者的視点から語られています.

この本の中で,光成沢美氏との結婚に関する第7章が,個人的には,とても印象に残りました.結婚生活に関しては,光成沢美氏自身が執筆された「指先でつむぐ愛」(講談社)が有名ですが,こうした第三者的記述もまた読者の心を打ちます.

福島氏にまつわる本を読みながら,感覚情報の重要性や,感覚情報の存在が当たり前である多くの人にとって,それを失った人たちに対する思慮が足りないこと,そして,改めて気づく他者とのコミュニケーションの重要性について学んだ気がしました.



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