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北山研究室の研究テーマ2012年度版
研究方針

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1.梁曲げ破壊型のスラブ付きPRC柱梁十字形部分架構の耐震性能評価に関する実験
[科学研究費補助金]


担当:M1 島 哲也 /卒論生 野中 翔太 森口 佑紀(芝浦工大・岸田研究室)

 日本学術振興会・科学研究費補助金による新規研究の初年度である。2009年度から2011年度に実施したPRC柱梁十字形部分架構実験(矢島2010、村上2012)および断面解析(嶋田2011)の延長上に位置する研究である。この研究は三年計画である。目的は、プレストレスト・コンクリート(PC)構造建物の性能評価型設計法を開発することを最終到達点として見据えつつ、PC柱梁曲げ部材が各種限界状態に到達するときの変形を精度良くかつ簡便に求める手法を構築することである。

 実際の建物にはスラブが取り付くため、そのような状態で静的実験を行って、梁部材の復元力特性、各種限界状態に至るまでの損傷過程などを詳細に調査する。とくにスラブ上面のひび割れ幅を測定した例はほとんどないので、デジタル・マイクロスコープを用いて詳細なひび割れ測定を実施したい。試験体は梁曲げ破壊が先行するように設計する。平面十字形部分架構に直交梁およびスラブを付加した2体とする。


2.場所打ち鋼管杭の曲げ性能に関する実験研究 
[ジャパンパイル(株)・芝浦工大岸田研究室との共同研究


担当:卒論生 片江 拡 山下 亮(芝浦工大・岸田研究室)

 杭頭部を鋼管によって曲げ補強したRC杭の曲げ性能を実験によって検証する。実物の1/5に縮小した杭径500 mmの試験体を4体程度作製して、片持ち柱形式で載荷する。実験変数は、杭に作用する圧縮軸力、コンクリートの圧縮強度およびせん断補強筋の有無である。本日(2012年4月16日)、試験体2体を大型構造物実験棟に搬入したので、今週中に載荷を開始する予定である。なお実験には北山研OBの田島祐之氏(アシス株式会社)が参加する。


3.鉄筋コンクリート骨組内の梁部材に対する耐震性能評価手法の高度化研究

担当:M2 鈴木 清久

 日本建築学会の「RC建物の耐震性能評価指針(案)・同解説」(2004)では、RC梁部材の復元力特性を評価する手法の一例が示された。そのなかの降伏点を求める手法については、実験結果との比較による詳細な検証が為されたが、それ以降のかぶりコンクリート圧壊点やコアコンクリート圧壊点については、全く検証されていない。

 この問題を検証するために、梁曲げ降伏が先行するRC十字形部分架構試験体3体(Wシリーズ)に正負交番繰り返し載荷する実験が2010年度に王磊氏によって実施された。その膨大な実験データは引き続き2011年度に鈴木清久氏によって検証され、RC梁のかぶりコンクリート圧壊時の変形性能について詳細な分析が為された。

 これらの実験結果をさらに検討して、RC梁のかぶりコンクリートの圧壊が生じるとき、また安全限界に到達するときの各々の限界変形を定量評価する手法を提案することを最終目標とする。そのためのツールとしてFEM解析やFiber Modelによる断面解析など、適宜考える。


4.鉄筋コンクリート有孔梁のせん断抵抗機構に関する解析研究             

担当:M2 落合 等

 2010年度に嶋田洋介氏および白井 遼氏を中心として北山研究室において作成された実験データベースをもとに、せん断破壊が先行するRC梁および有孔梁のせん断ひび割れ強度やせん断終局強度を評価する提案式(荒川式やAIJ靭性保証指針式、広沢式など)の精度の検証やせん断終局強度に達するときの部材変形の調査が、2010年度および2011年度に落合等氏によって為された。

 本年度は上記のデータベースに基づく統計的な分析結果を利用しながら、孔周辺を金物によって補強した有孔梁のせん断性能を把握するために、非線形有限要素解析を実施する。解析のためのソフトウエアはFINAL(大林組・長沼一洋氏開発)である。


5.東北地方太平洋沖地震で被災した耐震補強済みRC校舎の耐震性能 その1(I中学校)

担当:M2 石木 健士朗  

 
連層鉄骨ブレースで耐震補強されたにもかかわらず、東北地方太平洋沖地震(2011)で中破の被害を生じたRC校舎(3階建て、RC杭基礎)の現地調査が北山研究室によって実施された。その後、この建物の耐震二次診断を石木健士朗氏が行った。本年度にはこの建物の地震時挙動を把握するために、多質点系モデルによる地震応答解析、立体骨組による静的漸増載荷解析および地震応答解析を実施して建物の破壊過程を把握するとともに、現行の耐震補強設計の抱える問題点を指摘し、その解決法を模索する。立体骨組による地震応答解析等には、非線形骨組解析プログラムSNAP(あるいはCANNY)を使用する。

I-junior High School


6. 東北地方太平洋沖地震で被災した耐震補強済みRC校舎の耐震性能 その2(K小学校)

担当:M1 岡崎 里砂

 東北地方太平洋沖地震(2011)によって、耐震補強途中で中破の被害を生じた3階建てRC校舎が栃木県那須町にある。この建物は桁行方向に108 mと長い一文字形校舎であり、耐震補強の一期工事は完了したが、二期工事は未実施のまま被災した。被害はこの二期工事部分に集中し、RC柱の3本がせん断破壊(損傷度4)し、他の4本に損傷度3のせん断ひび割れが発生した。建物全体では耐震性能残存率Rは77.1%で中破と判定されたが、耐震補強を施していない二期工事部分だけで判定すると大破に近かった。

 また三連層鉄骨ブレースの短スパン直交梁にせん断ひび割れが発生し、鉄骨ブレースと鉄骨ブレースとに挟まれた境界梁端部には曲げひび割れが生じた。1階および3階の鉄骨ブレース脇のRC柱には輪切り状のひび割れが数本見られた。これらはいずれも三連層鉄骨ブレースを含むRC部分架構の浮き上がり回転あるいは全体曲げ挙動の兆候を示すものである。この建物の耐震診断は既に行われているので、その資料を詳細に検討する。さらに市貝中学校と同様に多質点系モデルによる地震応答解析、立体骨組による静的漸増載荷解析および地震応答解析を実施して、補強途中の建物の地震時挙動を把握するとともに、その破壊原因を探りたい。

K-elementary School


7. 東北地方太平洋沖地震で被災した耐震補強済みRC建物の被害要因の分析とそこから得られる教訓の抽出

担当:卒論生 山上 暁生

 耐震補強を施したが東北地方太平洋沖地震(2011)によって小破以上の被害を受けた鉄筋コンクリート校舎は、日本建築学会に委託のあった被害調査の範囲では、宮城県、福島県および栃木県に所在する18校の24棟ある。このほかに役所などの公共建物の幾つかにおいても、耐震補強したにもかかわらず被災したとの報告がある。このような被災事例を収集して詳細に調査・分析することによって、現行の耐震補強設計の抱える問題点や教訓を抽出し、今後の耐震補強設計に活かしたい。


8. 北山研PC、PRC、PCaPC柱梁部分架構試験体の実験データベースの分析

担当:M2 落合 等

 今までに北山研究室で実験実施した計50体(芝浦工大・岸田研究室の試験体を含む)のPC部分架構試験体(平面および立体、十字形およびト形)を対象として、諸元や実験・解析結果をまとめたデータベースを作成してきた(2008年度に矢島・嶋田によってスタート)が、2010年度に一応完成した。これをもとにした基本的な検討は嶋田洋介氏によって為されたが、詳細な分析は残された。そこでこのデータベースを用いて以下のような分析を行い、論文等によって外部に公開したい。


9. 鉄筋コンクリート柱梁接合部パネルの破壊機構モデルの検証に関する実験研究

担当:研究生 楊 森 /協力 M2 石木 健士朗

 RC柱梁接合部パネルの新しい破壊機構モデルとそれに基づく耐震設計手法が東大・塩原等准教授によって提案されている。これは東大で実施された平面柱梁部分架構実験の成果に基づくものであるが、それらの実験では検証を容易にするために柱軸力は0とし、柱幅と梁幅とは同一とするなど、かなり特殊な条件下で実験が行われた。

 そこで通常の建物のように、柱に圧縮軸力が作用し、かつ柱幅は梁幅よりも大きいという条件のもとで、東大の提案手法が成立するかどうか、平林幸泰氏が2011年1月から5月にかけて静的載荷実験によって検証した。試験体は平面十字形柱梁部分架構試験体5体(Jシリーズ)である。実験の結果、塩原の提案した破壊機構が生じたことをおおむね確認した。

 実験結果の詳細な分析はまだなので、変位計やひずみゲージ等の個々の測定結果の分析、ひび割れ幅の測定結果の整理と分析、写真の活用などを行って、柱梁接合部パネルの破壊機構について詳細な分析を加える。最終的には、RC骨組の保有耐力計算手法の高度化に寄与したい。


10. WPC構造立体耐震壁の耐震性能評価

担当:卒論生 栗本 健多

 2008、2009年度に実施した、小泉雅生氏を研究代表者(国土交通省による研究助成)とする共同研究のつづき。高度経済成長期に大量に建設されたWPC構造(プレキャスト鉄筋コンクリート壁式構造)の中層集合住宅ストックを主な対象として、その構造体に開口を新たに設置して、さらに補強を加えながら新たな空間構成を可能とする技術を開発する。

 2009年度にはWPC構造の立体耐震壁に静的載荷する実験を実施した(当時の主担当者は和田芳宏氏—現清水建設)。試験体は開口の有無、耐震補強の方法などを実験変数とする計8体であった。実験によって得られた膨大なデータは、2010年度には鈴木清久氏が卒業研究として、2011年度には長谷川俊一氏が修士論文研究として取り組んだ。

 しかしながら、まだ下記のような問題が残されている。
・単層補強試験体(C5S、S5S)の実験結果の詳細な検討 例:変形成分の分離と考察
・連層補強試験体(C5M、S5M)の耐力評価に関する検討 —未だに補強を施した場合の耐力を算定できない!
・耐震補強した試験体の各種限界状態の評価
・補強の有無による力学挙動の違いについての考察

 PCa(プレキャスト)壁板に開口を設けた際に開口周囲を鉄筋コンクリートあるいは鉄骨で耐震補強した試験体の挙動を精確に把握し、その結果をもとにして適切な耐震補強手法の提起にまで研究を進めて行きたい。最終的には、既存のWPC構造建物に開口を設けた際の具体的な耐震改修の設計手法を提案することが目標である。



 

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