研究方針 |
1995年の兵庫県南部地震以来、建物の耐震性能向上を目指すことが社会的に大きな要請となり、同時に一般の人達でも建物の保有する構造性能を理解できるような性能規定型の耐震設計法が求められるようになってきました。
21世紀に入っても東北地方太平洋沖地震(2011年)や熊本地震(2016年)などの地震による大災害が発生し、地震の脅威が払拭されることはありません。
このような「大地動乱の時代」に、われわれの研究室では鉄筋コンクリート(RC)構造およびプレストレスト・コンクリート(PC)構造の建物を対象として、地震による被害を防ぐこと、新たな耐震設計法を開発すること、柱や梁といった部材の耐震性能を精度よく評価する手法を開発することなどを目指して、以下のような研究を行なっています。
写真:鉄筋コンクリート部分骨組の実験 図:柱梁接合部周辺の応力状態
(1) 骨組あるいは部材(柱、梁や壁)を用いた実験
…どのように壊れるのか?
部材の強度はどれくらいか?
壊れるときの変形はどのくらい?
→ 実験によって現象を把握し、その理由や破壊のメカニズムを探る。
(2) 骨組の地震応答解析(マクロな検討)
…どのように揺れて、どこが壊れるのか?
(3) 部材の有限要素解析(ミクロな検討)
…目には見えない力の流れを把握して、力の伝達機構を理解する。
→ 部材の耐震性能評価法および耐震設計法の構築を目指す。
(4) 実際の地震で被災した建物の解析
… どのようにして、どこが壊れたのか?
また、どうすれば壊れなかったか?
耐震診断や地震応答解析、既存建物の耐震補強
→ 地震からの教訓を学び、耐震設計の考え方をさらに向上させる。
以上のように骨組や部材の地震時の挙動を実験と解析とによって把握することで、 最終的には合理的な耐震設計法の開発を目指します。北山研究室で実施するRCやPCの構造実験は大掛かりなため、チーム・ワークが大切です。コンピュータによる解析には、いろいろ検討してみようというヤル気と根気とが重要です。
このほかに以下のようなやや趣味的な課題も掲げています。このテーマには今まで何人もの卒論生がチャレンジしてくれました。古いもののなかから埋もれていた知見や経験を抽出して、それらを考察することによって未来に役立てることが重要です。
(5) 鉄筋コンクリート構造の歴史や耐震構造発展史
例えば…
・19世紀後半から20世紀初頭のRC建物はどのように構造設計されたのか。
・コンドル先生は日本での耐震設計をどのように考え、広めたのか。
・RC耐震壁はどのように誕生し、普及して行ったのか。
・文化的価値のある近代RC建物を保存しながら使い続けるには、どうしたらよいのか。
耐震補強と建築計画との両立はどうやったら成り立つのか。
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