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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2007年度研究成果

(1) 水平二方向地震力を受けるPRC立体部分骨組の耐震性能評価

北山和宏・田島祐之・矢島龍人

 鉄筋コンクリート(RC)構造とプレストレスト・コンクリート(PC)構造の中間的な性質を持つプレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)構造の立体柱梁十字形部分架構試験体2体(試験体JD-3およびJD-4)に対して、圧縮一定軸力下で水平二方向載荷する実験を行った。またそれぞれの立体試験体に対応する平面十字形柱梁接合部試験体2体(試験体JP-1およびJP-2)にも正負水平力交番載荷実験を行った。実験変数はPC鋼材を配置するシース管の表面形状であり、標準的な#1040のものとそれよりもリブの間隔が小さくかつリブ高さも大きい#3040(単位長さあたりの支圧面積比で#1040よりも4.7倍大きい)を使用した。コンクリート圧縮強度は77.2MPa、グラウト圧縮強度は65.3MPaであった。柱には一定圧縮軸力(軸力比0.10)を与えた状態で、柱頭に直交して取り付けた二基の水平ジャッキによって、柱頭の描く軌跡が八の字形になるように二方向水平力を与えた。梁には上端・下端に普通鉄筋4-D25ずつを配するとともに、異形PC鋼棒2-D22を配筋した。終局プレストレス率は0.27である。

 実験では平面柱梁部分架構試験体は2体とも柱梁接合部パネルがせん断破壊した。それに対して水平二方向載荷した立体柱梁部分架構試験体では接合部入力せん断力が平面試験体よりも12%増大し、シース管に#1040を用いた試験体では柱曲げ降伏後に接合部せん断破壊を生じ、#3040を用いた試験体では柱梁接合部パネルのせん断損傷は見られたが柱曲げ破壊を生じた。

 シース管の表面形状が部分架構の力学挙動に与える影響は、最大耐力までは平面、立体試験体ともにほぼ同様であったが、#1040を用いた場合には最大耐力後の接合部せん断力の低下が顕著であった。また#3040を用いるとシース管と周辺コンクリートとの付着が良好に保持されると考えられるが、その作用によってせん断破壊した接合部パネルの水平方向の膨張をより抑制することが示された。

(2) 梁曲げ破壊するPRC平面部分骨組の耐震性能に関する研究

北山和宏・田島祐之・戸上結美子

 梁曲げ降伏が先行するPRC平面十字形柱梁接合部試験体4体に正負水平力を交番載荷する実験を行い、シース管へのグラウトの有無およびシース管の表面形状(#1040および#3040)が単位架構の耐震性能に与える影響を検討した。コンクリート圧縮強度は77.2MPa、グラウト圧縮強度は65.3MPaであった。柱には一定圧縮軸力(軸力比0.10)を与えた。梁には上端・下端に普通鉄筋2-D13ずつ(試験体UB-1、GB-2、SB-3)あるいは3-D13ずつ(試験体GBS-4)を配するとともに、異形PC鋼棒2-D22(試験体UB-1、GB-2、SB-3)あるいはウルボン筋3-φ12.6(試験体GBS-4)を配筋した。終局プレストレス率はそれぞれ0.77あるいは0.55である。

 アンボンドの試験体ではPC鋼材は降伏せず、梁主筋は他の試験体よりも早い梁部材角0.25%で降伏した。最大耐力は梁付け根コンクリートの圧壊によって決まり、グラウトを施した試験体よりも4%から8%ほど小さかった。繰り返し載荷による梁付け根コンクリートの圧壊が顕著であり、梁主筋の座屈とその後の破断が観察された。

 #1040あるいは#3040のシース管を用いてグラウトを施した2体では、梁部材角0.35%から0.50%で梁主筋が降伏し、0.68%から0.69%でPC鋼材が降伏した。梁付け根コンクリートの圧壊は生じたが、アンボンドの試験体と比べるとその発生は遅かった。また周辺コンクリートとの付着が良好である#3040のシース管を用いることによって、#1040の場合と比べてコンクリート圧壊の兆候および圧壊によるコンクリート剥落が遅延された。

 PC鋼材としてウルボン筋を梁断面内に3本配置した試験体(GBS-4)では、梁主筋およびPC鋼材が降伏した後、梁部材角2.7%程度で上下のPC鋼材が順次破断して耐力が急激に低下した。

(3) PC構造内のPC鋼材ーグラウトーシース管ーコンクリート間の付着性能に関する研究

北山和宏・宮崎裕ノ介・田島祐之

 プレストレスト・コンクリート(PC)構造の柱梁部材の力学特性を精度よく評価するためには、PC鋼材から周辺コンクリートへの応力伝達機構を把握することが重要である。その際、PC鋼材-グラウト材-シース管-コンクリートという4つの物体の間に存在する3つの付着破壊界面を有する複雑系を検討対象とすることが不可欠となる。そこで、これらの界面における基本的な付着伝達機構を、コンクリート塊に埋め込んだPC鋼材の単調引き抜き実験および非線形三次元有限要素解析によって詳細に検討した。

 実験では150mm角のコンクリート直方体(スパイラル筋によって補強)に埋め込んだPC鋼材を油圧式万能試験機によって単調に引き抜いた。実験変数はコンクリート圧縮強度(58.8MPa、88.8MPa)、シース管の有無とその表面形状(1000番台、3000番台)、グラウト圧縮強度(53.4MPa、86.6MPa)、埋め込む鋼材の種類、径および降伏強度(異形鉄筋[D13からD25、SD295からSD685]、ネジ鉄筋[D22]、ウルボン筋[φ9からφ12.6])である。

 実験ではPC鋼材とグラウトとの界面で付着破壊が生じたが、グラウト・キーが直接せん断破壊する場合の付着強度は、RCのときのそれとは大きく異なることを指摘した。ねじりフシを有するウルボン筋を引き抜く実験では付着力とすべり量との関係において複数のピークが存在することを示した。

 FEM解析は三次元非線形有限要素解析プログラムFINALを用いて行った。鋼材、グラウト、シース管およびコンクリートは全て8節点アイソパラメトリック立体要素を用いてモデル化した。この解析では各界面での付着伝達を、ボンド・リンク要素を使用することなくコンクリートや鋼材といった各要素の接触で表現することを試みた。その結果、解析による付着強度は実験結果とよく一致した。ただし最大強度時のすべり量など変形性能は実験とは大きく異なった。これは鋼材とコンクリートとの付着作用を弾性体(具体的には鋼材のフシとコンクリート)の接触によってモデル化したためにやむを得ない結果である。さらにグラウトおよびコンクリートの内部応力状態、グラウト材の膨張によってシース管に発生するフープ・テンションなどを詳細に調査し、付着破壊面の遷移が生じる可能性を指摘した。


(4) 下階壁抜け柱に隣接して連層鉄骨ブレース補強を施したRC立体骨組の地震時挙動に関する実験研究

北山和宏・林秀樹・溝下麻美・松本玄徳(芝浦工大岸田研究室)

 既存RC建物における下階壁抜け柱の圧縮軸耐力不足の際には、軸崩壊防止のための補強を兼ねて連層鉄骨ブレースを当該柱に隣接して設置することがよく行われる。この場合、鉄骨ブレースと直交する方向の水平力により下階壁抜け柱の軸力が大きく変動する。また下階壁抜け柱は鉄骨ブレースからの軸力変動を受けるため、鉄骨ブレースによって下階壁抜け柱の軸崩壊を加速させることも生じ得る。そこで下階壁抜け柱に隣接して連層鉄骨ブレース補強を施したRC立体骨組試験体1体に対して、鉛直・水平二方向の計三方向の外力を与える静的実験を実施した。

 試験体は実物の約1/4スケールで桁行方向の中央スパンを連層鉄骨ブレースで補強した2層(階高800mm)のRC立体骨組である。桁行方向は3スパン、張間方向は1スパンで、スパン長はともに1000mmである。張間方向には下階壁抜けフレームを設け、鉄骨ブレースが取り付く1層柱を下階壁抜け柱とした。試験体の破壊モードは全体曲げ破壊とした。コンクリート打設は試験体を鉛直に維持した状態で、層ごとに打ち分けることなく一気に行った。その圧縮強度は36.3MPaであった。

 連層鉄骨ブレースを含む桁行方向中央スパンに160kNの一定圧縮軸力を負荷したまま、桁行および張間方向にそれぞれ水平力を与えることにより加力を行った。破壊が進んだ実験後半では張間方向の頂部変形角を1%に維持したまま(下階壁抜け柱が圧縮側となる方向)で、桁行方向に頂部変形角1%から3%まで繰り返し載荷した。

 実験では連層鉄骨ブレースが全体曲げ破壊した。鉄骨ブレース脇のRC付帯柱には全体曲げによる多数の輪切り状ひび割れが発生し、頂部変形角0.5%で全主筋が引張り降伏した。また1層脚部コンクリートの圧壊が激しく頂部変形角2%以降に耐力低下が見られ、繰り返し載荷によって柱主筋の座屈および破断が生じた。下階壁抜け柱には二方向水平力載荷による軸力変動によってせん断ひび割れが発生したがせん断破壊することはなく、脚部コンクリートの圧壊状況も目視では他方のRC付帯柱との差異は観察されなかった。ブレース底部の基礎梁にはアンカー筋の引き抜きによる水平なひび割れが発生した。張間方向の直交梁には連層鉄骨ブレースに対する抑え込み効果によるせん断ひび割れが多数観察された。また2層耐震壁にも同様のせん断ひび割れが発生した。

 連層鉄骨ブレース脚部のアンカー筋には水平せん断力とともに全体曲げ破壊による引き抜き力も作用しており、特にブレース斜材の交点直下のアンカー筋の引張りひずみは降伏直前まで進展した。このことは連層鉄骨ブレースが全体曲げ破壊するときのアンカー設計に対して、従来とは異なる設計手法が必要になる可能性を示唆している。本実験における立体骨組全体の力学挙動の把握、下階壁抜け柱に作用した軸力およびその変形性状などとともに今後さらに検討する必要がある。

(5) 連層鉄骨ブレースで耐震補強した鉄筋コンクリート平面骨組の三方向外力下での耐震性能に関する解析研究

北山和宏・中沼弘貴

 連層鉄骨ブレース補強したRC平面骨組試験体に一定圧縮軸力および二方向水平力を載荷した静的実験(2006年度実施)を対象として、全体曲げ破壊する鉄骨ブレース付きRC部分骨組の力学特性を詳細に調査するため、非線形三次元有限要素解析(FEM)を実施した。FEM解析には大林組開発のプログラムFINALを使用した。

 実験では、連層鉄骨ブレースを含むRC部分骨組が全体曲げ破壊するときの水平耐力および変形性能ともに、水平一方向載荷した場合と比較して低下することを示した。水平二方向載荷によるこのような耐力および変形性能の低下の原因として、ブレース付帯柱の1層危険断面における二軸曲げの影響が大きいことを実験結果の詳細な分析から示すとともに、非線形三次元FEM解析によって詳細に検討した。解析ではブレース脚部のアンカー筋の抜け出し挙動を実験結果に基づいてモデル化した。FEM解析では圧縮側ブレース付帯柱の危険断面隅角部でのコンクリート圧壊が、引張り側付帯柱の全主筋が引張り降伏した頂部変形角0.25%時に発生した。水平一方向載荷したFEM解析では頂部変形角1%で付帯柱脚部コンクリートの圧壊が生じたことと比較すると、水平二方向載荷時に二軸曲げを受けるRC付帯柱の脚部コンクリート圧壊が早期に生じることを確認した。

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研究成果


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