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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2006年度研究成果

(1) プレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)立体柱・梁部分架構の耐震性能に関する実験研究

北山 和宏

鉄筋コンクリート(RC)構造とプレストレスト・コンクリート(PC)構造の中間的な性質を持つプレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)構造の立体柱・梁十字形部分架構試験体(名称JD-3)1体に対して、圧縮一定軸力下で水平二方向載荷する実験を行った。柱頭に直交して取り付けた二基のジャッキによって、柱頭の描く軌跡が八の字形になるように二方向水平力を与えた。梁には上端・下端に普通鉄筋4-D25ずつを配するとともに、異形PC鋼棒2-D22を配筋した。終局プレストレス率は0.27である。
 実験では柱および梁の付け根においてコンクリートが激しく圧壊し、梁PC鋼材のひずみも弾性限を超えたものの、柱梁接合部のせん断破壊によって層間変形角3%のときに最大層せん断力に達した。梁の普通主筋では層間変形角1%以降に危険断面位置において圧縮鉄筋の引張りへの転化が見られ、柱梁接合部内での付着劣化が生じた。異形PC鋼棒の付着性状、柱梁接合部の二軸せん断耐力などについての詳細な検討は今後実施する。

(2) 連層鉄骨ブレースで耐震補強された鉄筋コンクリート平面骨組の三方向外力下での耐震性能

北山 和宏

鉄筋コンクリート(RC)建物を鉄骨ブレースで耐震補強するとき、力の流れをスムーズにするために鉄骨ブレースを上下に連層で設置することが多い。2002年度に当研究室では、連層鉄骨ブレースによって耐震補強した二層三スパンのRC縮小平面骨組試験体に一方向水平載荷実験を行い、全体曲げ破壊および基礎浮き上がり破壊時の耐震性能を検討した。しかし実地震時には水平力は二方向から作用するので、特に鉄骨ブレース脚部での全体曲げ破壊時の挙動は大きく影響を受けると予想される。そこで本研究では2002年度と同一の平面骨組試験体に対して面外方向に載荷した状態を保持したまま(頂部変形角1.5%)、面内水平力および一定圧縮軸力を与える静的実験を行い、三方向外力下での全体曲げ破壊の力学挙動を詳細に検討した。
 なお実験に先立ち柱軸力の制御ミスによって、独立柱二本が二層位置で面外に座屈するという事故を生じた。ただしこの事故が面内力に対する骨組試験体の耐震性能に与える影響は小さいと判断して、本実験を実施したことを付記する。
 この実験研究によって得られた結論を以下に示す。
a. 頂部変形角0.4%でブレース脇の付帯柱の全主筋が柱脚危険断面位置で引張り降伏し、その後境界梁が曲げ降伏して連層ブレースに対する抑え込み効果が一定になって骨組の最大水平耐力に達した(頂部変形角1%)。その後、水平耐力は徐々に低下し、頂部変形角2%を超えると付帯柱の主筋が次々に破断したため、耐力が急激に低下した。
b. 境界梁の曲げ戻し効果とアンカー筋の引張り抵抗による寄与を考慮した水平耐力計算値(Qcal)よりも、実験による水平耐力最大値(Qmax)は6%ほど小さかった。また、2002年度の面内加力のみの試験体の結果と比較すると、Qmax/Qcalの値は10%ほど小さかった。これより水平二方向加力によって鉄骨ブレース脚部で全体曲げ破壊するときの水平耐力は低下する、と判断できる。これは主に圧縮側の付帯柱脚部のコンクリート圧縮損傷が二方向加力によって促進されたためと考えられる。
c. 三方向外力下での実験における限界変形は、「既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説2001」(日本建築防災協会)による終局変形よりも1.4倍大きかった。これより耐震診断基準は三方向外力下においても、鉄骨ブレースで耐震補強された骨組が全体曲げ破壊するときの終局変形を安全に評価できる。

(3) 既存学校建物の耐震診断および耐震補強計画の策定

北山 和宏

文部科学省「21世紀COEプログラム」における研究の一環として、横浜市立桜台小学校の大規模改修に関するプロジェクトに参加している。既存校舎は昭和30年および34年に建設されたRC三階建ての一文字形で、コンクリート圧縮強度は1階:14.9MPa、2階:13.7MPa、3階:12.3MPa、とかなり悪い。桁行き方向は三構面で形成されており、代表的な各柱1本ずつを取りだしたユニット骨組を対象として、2001年版耐震診断基準に則って二次診断を実施した。
 その結果、1階にはせん断柱、曲げ柱および極脆性柱が混在するが、2階以上は全て曲げ柱であった(ただし靱性指標Fは1.0から2.75とばらついた)。構造耐震指標Isの値は1階:0.29、2階:0.34、3階:0.46、保有水平耐力を表すCtuSd指標は1階:0.40、2階:0.37、3階:0.50であった。全体的に耐震性能は劣っているが、特に1階および2階は強度、靱性ともに不足していることが分かった。1階北側の柱は腰壁および垂れ壁のせいで極脆性柱となり、靱性指標F=0.8で1階の耐震性能が決定されるため、その性能を引き下げていた。
 このような既存校舎に対して強度抵抗型の耐震補強を施すために、北側構面に鉄骨ブレースの新設、袖壁や開口壁の増設を行うことが有効なこと、ただしこの部分の既存の柱幅および梁幅ともに小さいために増設部材のサイズを大きくできないこと、支配面積の大きい中(なか)構面に出入りや通風の開口を設けつつ鉄骨格子やコンクリート製格子ブロックなどで耐震補強することが有効であること、などを提案した。また当該校舎は張間方向2階および3階の耐震壁量が少ないので、張間方向の耐震補強も同時に実施するべきであることを指摘した。

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