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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2005年度研究成果

(1) プレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)平面柱・梁部分架構の耐震性能

北山 和宏

鉄筋コンクリート(RC)構造とプレストレスト・コンクリート(PC)構造の中間的な性質を持つプレストレスト鉄筋コンクリート(PRC)構造の平面柱・梁十字形部分架構試験体を終局プレストレス率を変数として10体作製し,静的正負交番水平力載荷実験を行った。試験体は全て梁曲げ降伏が先行するように設計した。しかしながら実験では3つの破壊形式を有し,PC鋼材とグラウトの付着力および梁主筋の付着力が梁危険断面位置での梁残留ひび割れ幅に大きく影響することを把握した。得られた結論を以下に示す。

a. 本実験においては3タイプの破壊形式が観察され、最大層せん断力時の層間変形角は1.5%から2.9%とばらつきが生じた。梁曲げ破壊を生じた4体の試験体(PC鋼棒にウルボン使用)では、耐力低下が始まった直後にPC鋼棒が破断し、耐力が急激に低下した。
b. 梁危険断面における残留ひび割れ幅の急増は最大層せん断力時や梁主筋・PC鋼棒降伏時に生じたのではなく、梁主筋あるいはPC鋼棒の付着劣化によって引き起こされた。

(2) 圧着接合されたプレストレスト・コンクリート柱梁接合部パネルのせん断ひび割れ挙動と損傷過程

北山 和宏

プレキャスト・コンクリート柱梁部材を圧着接合して組み立てた骨組内の柱梁接合部の実験結果に基づき,柱梁接合部パネルの損傷過程におけるせん断ひび割れの挙動について検討した。接合部せん断変形角とひび割れ幅の関係は線形性を有し,損傷を表す指標となること,また,鉄筋コンクリート造柱梁接合部に比べて損傷低減効果が期待できることがわかった。得られた結論を以下に示す。

a. 接合部パネルのせん断ひび割れ幅とせん断変形角との関係の評価式を得た。PC接合部はRC接合部に比べてプレストレス力による損傷低減効果が期待できる。
b. 接合部せん断変形角とひび割れ幅関係はγp=0.5%から0.6%で勾配が変わる2折れ線の線形性を有し,接合部の損傷をあらわす指標として利用できる。RC接合部の場合と比較すると同じせん断変形角時のひび割れ幅が半分程度であり,プレストレスにはひび割れ幅を低減する効果がある。
c. 接合部パネル内の補強筋のひずみが1000μまでは最大ひび割れ幅は線形性を有するが,降伏時には最大ひび割れ幅が0.2mm から1.4mm とばらついた。今回の接合部パネルの大きさにおいて,ひび割れ幅の合計値が0.6mm より小さい場合,ほぼ弾性範囲内にある。
d. ひび割れ幅は接合部主引張ひずみと直接関係しているが,0.6%時を境に発散した。
e. 残留ひび割れ幅とピーク時最大ひび割れ幅には良い相関があり,RC接合部とほぼ同様の関係を示した。
f. 残留接合部せん断変形角とピーク時の変形角の関係においては,プレストレスの効果により除荷時の変形角が十字形接合部の場合はRC接合部の半分となり,ト形の場合はRCと同等の傾向となった。
g. 接合部せん断ひび割れ発生時の強度は計算式と良い相関があったが,初期剛性は計算値が1.5倍から2.5 倍程度実験値よりも大きくなった。

(3) 連層鉄骨ブレースで耐震補強された鉄筋コンクリート建物の三方向地震時挙動

北山 和宏

鉄筋コンクリート(RC)建物の耐震補強に鉄骨ブレースを設置する際、ブレースは上下の層で同じ場所に設置されることが多い。そのときブレース側柱には大きな変動軸力が加わる為、強度抵抗型のタイプ1破壊(鉄骨ブレースの軸降伏や座屈による破壊)ではなく、タイプ3破壊(全体曲げ破壊)や、基礎浮き上がり破壊の破壊形式となる可能性がある。本報では連層ブレースで耐震補強されたRC建物を対象とし3方向地震動を入力した地震応答解析を行い、全体曲げ破壊と基礎浮き上がり破壊時の建物全体の挙動およびブレース側柱の軸力変動に関する知見を得ることを目的とした。得られた知見を以下に示す。

a. 連層鉄骨ブレースを含む骨組を全体曲げ破壊させることで各層の応答変位を抑制することができた。全体曲げ破壊は耐震補強上有効である。
b. ブレースの基礎浮き上がり破壊は各層の変形角を均等にする効果があり、上層での応答変位を抑制することができるが、浮き上がり時に1層での変形角が補強前より大きくなる可能性がある。また、浮き上がり耐力は既存建物の基礎梁の性能に依存するので、十分な補強効果が得られない場合がある。
c. ブレース側柱の変動軸力は全体曲げ破壊において圧縮側で軸力比0.57から引張側で軸引張耐力に達し、大きな変動が見られた。

(4) 学校建物の耐震補強と建築計画との関係に関する事例調査

北山 和宏

新しい教育に対応したオープン・プランの導入などの大規模改修とともに耐震補強を計画した標準的な片廊下形RC造学校建物を対象として、幾つかの実例をここ数年のあいだ調査してきた。2005年度には、教室の南側に靱性依存型骨組を増設することによって耐震補強を施すとともに、普通教室や職員室、図書室などを改修した小学校を実地に調査して、その有効性および使われ方について検証した。


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