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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2004年度研究成果

(1) 梁主筋付着性状を変化させたRC立体柱・梁接合部のせん断挙動

北山 和宏,岸田 慎司

鉄筋コンクリート柱・梁接合部内を通し配筋される主筋の付着性能を変数として, 立体柱・梁接合部試験体に二方向水平力を正負交番繰り返し載荷する実験を行い,柱・梁接合部パネル内の せん断抵抗機構を検討した.試験体は梁が四方から貫入したもの(十字形+十字形)として,比較の為, 対応する平面柱・梁接合部試験体も実験した.検討の結果を以下に述べる.

1) 平面試験体において,最大耐力は付着を絶縁することにより19.5%低下した。梁が四方から貫入する立体柱・ 梁接合部のせん断強度は主筋の付着を絶縁することによって,付着良好の場合と比較して26%低下した.平面 および立体試験体での最大強度に付着性状の違いが影響を与えた.
2) 立体架構における二軸せん断強度は,矩形相関曲線の外側に位置した.すなわち,各構面の応力に対して 各々個別に設計することで,任意方向のせん断力に対して接合部を安全に設計することができるが,靭性指針式 による計算値は実験値を過小評価した.
3) 接合部内横補強筋のひずみや梁主筋の付着力などの実験結果から,変形とともに接合部入力せん断力に 対するコンクリート圧縮負担割合は変化した.最大耐力以降は,コンクリート負担割合が主方向および直交方向 ともほぼ同じになった.


(2) 圧着接合されたプレストレストコンクリート柱・梁接合部のせん断ひび割れ幅による損傷評価

岸田 慎司,北山 和宏

建物の性能評価に基づく耐震設計を実現するためには,各部材の損傷と性能(耐力,変形特性) との関係を明示することが必須の要件である.本研究では,プレキャスト工法によって作製された鉄筋コンクリート の柱および梁部材を,PC鋼材を緊張することによって圧着して組み立てられた部分架構の柱・梁接合部を対象として, 地震外力を受けた柱・梁接合部の損傷評価を行うことを目的としている.具体的には,過去に行われた実験データを 用いて,接合部パネルの復元力特性の評価,せん断変形角とせん断ひび割れ幅との関係の評価,接合部内横補強筋 ひずみとひび割れ幅との関係,パネル内主ひずみとひび割れ幅との関係,および残留ひび割れ幅と最大ひび割れ幅 の関係を評価した.接合部せん断変形角−ひび割れ幅関係は線形性を有し,損傷を表す良い指標となることを指摘した.


(3) 圧着接合されたプレストレスト・コンクリート柱梁接合部の耐震性能

北山 和宏,岸田 慎司

プレキャスト鉄筋コンクリート柱および梁をPC鋼材で圧着接合する方法(PCaPC圧着工法) によって作製された骨組内における柱梁接合部のせん断耐力を把握する目的で、立体架構を含む柱梁接合部せん断 破壊型試験体の静的正負交番繰返し載荷実験を行った。得られた知見を以下に要約する。

(1) PCaPC工法で造られた立体骨組接合部もRC柱梁接合部と同様にせん断破壊することを実験によって示した。
(2) グラウト材のないアンボンド柱梁接合部においてもせん断破壊が発生することを示した。
(3) 十字型柱梁接合部のせん断耐力は、梁PC鋼棒の付着性状や配置位置に依存することなく、コンクリート強度の関数 として与えられたRC柱梁接合部のせん断強度と同等に評価できることを示した。
(4) 立体架構と平面架構との層せん断力を比較すると、4面に直交梁が付いた場合25%、3面に直交梁が付いた場合 13%の耐力上昇がそれぞれ見られた。直交梁が3面に付く立体柱梁接合部の最大層せん断力は平面十字型柱梁接合部 と比較して十字型方向載荷時には30%、十字型およびト型方向の水平二方向に同時載荷したときの合せん断力は13%、 それぞれ増大した。
(5) 立体架構における二方向水平せん断力下の最大層せん断力は矩形相関曲線の外側に位置した。すなわち各構面 のせん断力に対して各方向ごとに耐震設計することで、任意方向のせん断力に対して柱梁接合部の安全性を確保できることを確認した。


(4) 連層鉄骨ブレースで耐震補強された鉄筋コンクリート建物の地震時挙動

北山 和宏

既存鉄筋コンクリート(RC)建物を耐震補強するために鉄骨ブレースの増設が多用される。 本研究では、鉄骨ブレースが連層で配置された場合の破壊形式として基礎の浮き上がり回転および引張り側RC柱の 軸降伏による全体曲げ破壊を対象として、これらの破壊形式が補強RC立体建物の地震時挙動に与える影響を静的漸 増載荷解析および地震応答解析によって検討した。これらの破壊形式を再現するために、鉄骨ブレースの頂部および 底部にI型断面を持つマルチ・スプリング・モデルを設定し、鉄骨ブレースと既存躯体とを接続するアンカー筋の抜け出し を考慮できる材料特性を与えた。塑性域での繰り返し載荷に対するこのモデル化の妥当性は、2層3スパンの縮小骨組実験 の結果を良好に再現できることによって確認した。次に典型的な4階建てRC学校校舎を対象として、連層鉄骨ブレース を桁行き構面に設置して耐震補強した立体建物の力学性能を非線形骨組解析によって調査した。その結果、浮き上がり 回転破壊を生じる場合には各層の変形を等しくすることができるが、入力地震動によっては補強建物1層の応答層間変形角 が補強前に比べて大きくなる場合があること、静的および動的解析結果から連層鉄骨ブレースを全体曲げ破壊させること で補強後のベース・シアが増大し、応答変位を抑制して他の部材の降伏ヒンジの発生を抑えることができたため、全体曲 げ破壊は耐震補強上有効であると判断できること、などを指摘した。


(5) 鉄筋コンクリート柱梁接合部のせん断破壊機構に関する研究

北山 和宏,岸田 慎司

RC柱梁接合部内の柱・梁主筋に沿った付着性能に注目して、その他の要因は単純化して排除できる ようなRC部分架構実験の詳細な測定結果に基づいて、鉄筋コンクリート柱梁接合部のせん断破壊機構を明らかにした。 得られた主要な成果を以下に示す。

1) 柱梁接合部に入力されるせん断力を正しく算定するためには接合部内コンクリートの圧壊に起因する体積膨張の影響 を適切に考慮する必要があることを指摘し、接合部入力せん断力の算定方法を具体的に示した。
2) この新規のせん断力算定法を用いると、柱梁接合部内に通し配筋された梁主筋または柱主筋に沿った付着力が低下する ことによって接合部水平せん断力または鉛直せん断力が低下し、それに伴って層せん断力が低下することを示した。 これは柱梁接合部のせん断破壊後も入力せん断力は増大し続けるという従来の知見を覆すものであり、柱梁接合部の 破壊が過大なせん断入力によって引き起こされるせん断破壊であることを示し得た。また、柱梁接合部内に形成される 斜め圧縮ストラットの圧縮主ひずみとその角度とを求めて柱梁接合部の破壊状況と照らし合わせることにより、柱梁接合部 のせん断破壊は斜め圧縮ストラットの圧壊とその角度変化によって生じることを明らかにした。


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