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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2003年度研究成果

(1) 二方向水平力を受ける鉄筋コンクリート立体柱・梁接合部のせん断抵抗機構

北山 和宏,岸田 慎司

鉄筋コンクリート骨組内の柱と梁との交差部(柱・梁接合部)には,三方向外力によって複雑な応力が作用する.この柱・梁接合部の破壊機構として,コアコンクリートの圧壊によるせん断破壊や斜めひび割れの開口による曲げ破壊などが提案されているが未だに定説を得ていない.そこで本研究では接合部内を通し配筋される主筋の付着性能と試験体形状とを変数として,立体柱・梁接合部試験体に二方向水平力を正負交番繰り返し載荷する実験を行い,柱・梁接合部パネル内のせん断抵抗機構を検討した.試験体は二方向とも十字形のもの2体(接合部内主筋の付着を改善あるいは絶縁した試験体)と一方向は十字形で他方向はト形のもの1体である.二方向水平力は柱頭の描く軌跡が45度の直線となるように制御した.比較のため,対応する平面柱・梁接合部試験体も実験した.試験体は全て接合部のせん断破壊によって耐力が決定した.立体試験体では柱・梁接合部上下の隅角部においてコンクリートの圧壊が顕著であり,接合部せん断破壊後に柱の曲げ圧壊を生じたものもあった.検討の結果を以下に述べる.1) 梁が四方から貫入する立体柱・梁接合部のせん断強度は主筋の付着を絶縁することによって,付着良好の場合と比較して25%低下した.2) 梁が三方から貫入する立体柱・梁接合部では,最大強度後のせん断耐力の低下が顕著に生じた.梁の取り付かない面での接合部破壊が進行したためと考えられる.3) 接合部内横補強筋のひずみや柱主筋のひずみなどの実験結果から,柱・梁接合部周辺の応力状態の違いが接合部内部の立体的な応力の流れに影響を与えることを指摘した.

(2) 連層鉄骨ブレースによって補強された鉄筋コンクリート骨組の耐震性能評価

北山 和宏

連層鉄骨ブレースを含む鉄筋コンクリート平面骨組を対象として,静的水平力を正負交番繰り返し載荷する実験を昨年度に実施した.ここでは実験結果に基づき連層鉄骨ブレースを含む骨組の破壊形式のうち,基礎の浮き上がり回転破壊および引張り側のRC柱の全主筋が引張り降伏する全体曲げ破壊を対象として,それぞれの耐震性能評価を行った.得られた主要な結論を以下に記す.1) 全体曲げ破壊時の保有水平耐力は,RC側柱の引張り主筋による抵抗曲げモーメントと境界梁による曲げ戻しモーメントとをあわせて考慮しても実験結果を過小に評価した.そのためブレース基部の鉄骨横枠と基礎梁との接合が十分に確保されるならば,RC側柱に隣接する鉄骨縦枠の全体曲げ強度に対する寄与を考慮すべきである.2) 「2001年改訂版既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説」に基づいて,境界梁および単独の連層鉄骨ブレースの変形能力を考慮することによって両試験体の変形性能を評価したところ,ともに実験結果に対して安全側の評価を与えた.3) 連層鉄骨ブレースの浮き上がり回転破壊を生じたときの変形性能は,全体曲げ破壊時の変形性能よりも優れていた.4) 頂部変形角2%の範囲では全体曲げ破壊時の耐力低下はわずかであり,さらにエネルギー吸収量も多いことから,浮き上がり回転破壊よりも全体曲げ破壊のほうが耐震性能として総体的に優れていると判断した.

(3) 下階壁抜け柱を含む鉄筋コンクリート立体建物を連層鉄骨ブレースで補強したときの力学特性

北山 和宏

鉄筋コンクリート建物の耐震補強を実施する際,地震力を受ける下階壁抜け柱の軸圧壊を防止するために,当該柱に鉄骨ブレースを隣接して設置することが推奨される.しかし地震時には鉄骨ブレース構面方向の水平力によって鉄骨ブレースに隣接するRC柱には引張りから圧縮まで変動する軸力が導入されるため,下階壁抜け柱には想定外の変動軸力が作用して危険な状態が増幅される可能性がある.そこで本研究では,連層鉄骨ブレースおよび直交する下階壁抜けフレームを有する立体建物の静的漸増載荷解析を行い,補強建物の基本的な力学特性を検討した.典型的な3階建てRC学校校舎(桁行き方向5スパン,張間方向2スパン)を対象として,桁行き方向の側構面の中央に連層ブレースを設置した.さらに連層ブレース左右の直交骨組のうち一方の2層および3層に耐震壁を設置して,連層ブレースの一方の側柱を下階壁抜け柱とした.解析では基礎下部に地盤バネを設置して連層ブレースの浮き上がりを再現した.立体骨組弾塑性解析はプログラムCANNY-Eを用いて一方向あるいは二方向に静的漸増水平力を載荷することによって行った.水平力は桁行き方向,張間方向とも下階壁抜け柱が圧縮軸力を受ける方向に与えた.桁行き方向加力時の下階壁抜け柱の圧縮軸力比は0.33であったのに対して,二方向加力時のそれは0.43に増大した.二方向加力時の下階壁抜け柱の負担圧縮軸力は層間部材角2%以降は一定に推移したが,隣接する鉄骨縦枠の負担軸力は増大し続けた.下階壁抜けRC柱および鉄骨縦枠に作用する圧縮軸力の総和は,下階壁抜け骨組の初期圧縮軸力と引張り側RC柱の全主筋が引張り降伏するときの引張り軸力との和として求めた略算値とほぼ一致した.

(4) 圧着接合されたプレストレストコンクリート柱・梁接合部の性能評価設計に関する研究

北山 和宏,岸田 慎司

プレキャスト工法によって作製された鉄筋コンクリートの柱および梁部材を,貫通させたPC鋼材を緊張することによって組み立てた部分架構の柱・梁接合部を対象として,そのせん断力に対する設計の考え方,柱・梁接合部がせん断破壊するときの層せん断力を簡易に求める方法,復元力履歴特性におけるエネルギー吸収性能の定量評価および接合部パネルの斜めせん断ひびわれ発生強度の評価法をそれぞれ提案した.柱・梁接合部を通し配筋されるのはPC鋼材のみであることが特徴である.なお外柱・梁接合部でPC鋼材の定着具が接合部内に設置される場合や,骨組隅角部のL形接合部および二方向から梁が接続する立体柱・梁接合部については,今後検討することが必要である.

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