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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2002年度研究成果

(1) 鉄筋コンクリート柱・梁接合部の破壊機構

鉄筋コンクリート内柱・梁接合部に正負交番または単調方向の水平力を加える実験を行い,柱・梁主筋付着性能,接合部横補強筋量,接合部入力せん断力および加力方法が接合部破壊に至る変形性能やせん断性状に与える影響について検討した.得られた結果を以下に示す.

1)主筋の付着性能を向上させるために,接合部内の通し主筋を挟み込む形で同径の鉄筋を溶接して抱き合わせ,主筋付着表面積を増大させた.梁主筋に抱き合せをした試験体では最大層せん断力が17%向上し,柱主筋に抱き合せをした試験体では最大層せん断力が14%向上した.その後,柱主筋あるいは梁主筋に沿った付着応力が減少するとともに層せん断力も漸減した.

2)コンクリート表面に貼付したひずみゲージによる測定では,梁危険断面におけるコンクリート圧縮ひずみ分布は梁せい全域に渡っており,その形状は三角形であった.接合部せん断破壊によって水平に膨張した接合部コンクリートを両側のRC梁が拘束する.梁付け根に曲げひびわれが生じるため,梁危険断面には台形分布状の拘束力が発生する.これに曲げモーメントによって生じる三角形状の圧縮応力分布を加えることによって,梁断面全体が三角形分布の圧縮応力を受けることを説明できる.

3)梁危険断面のコンクリート圧縮ひずみ分布の形状を考慮して接合部水平せん断力を求めた.この方法では梁危険断面におけるコンクリート圧壊域深さが拡大するほど,接合部水平せん断力がより低下した.

4)コンクリート圧縮ひずみ分布の状態を考慮した接合部水平せん断力は,危険断面位置の梁主筋に貼付したひずみゲージの出力から直接引張り鉄筋力を求める方法による接合部水平せん断力よりも38%から49%低く推移した.また,コンクリートひずみ分布の状態を考慮した接合部水平せん断力は,接合部内梁主筋の付着応力度が減少すると,最大層せん断力以降に低下する傾向を示した.

(2) 連層鉄骨ブレースによって補強された鉄筋コンクリート骨組の耐震性能

連層鉄骨ブレースを含む鉄筋コンクリート平面骨組を対象として,水平力を正負交番繰り返し載荷する実験を行ない,連層ブレースの挙動が骨組の耐震性能に与える影響を検討した.試験体は実物の約1/4スケールを有する2層3スパンの平面骨組2体で,スパン1000mm,階高800mmである.柱断面は140mm×140mm,梁断面は140mm×90mm,基礎梁断面は220mm×90mmで共通である.実験変数は連層ブレースを含む骨組の破壊形式であり,基礎の浮き上がり回転(試験体No.1)あるいは引張り側のRC柱の全主筋が引張り降伏する全体曲げ破壊(試験体No.2)を生じる骨組の耐力と変形性能とを調べた.鉄骨ブレースの断面はH-60×60であり,厚さ6mmの鋼板を溶接で組み立てた.鉄骨ブレースに直接溶接したアンカー筋をRC柱・梁に埋め込むことによって鉄骨ブレースとRC躯体とを接合した.コンクリート打設は試験体を水平に寝かせた状態で行なった.コンクリート圧縮強度は30MPaであった.実験では柱の一定圧縮軸力を保持しながら,試験体中央の頭部に正負交番水平力を与えた.四つのフーチングはPC鋼棒によって反力床と緊結した.

ただし浮き上がり回転を生じさせる試験体では鉄骨ブレース直下のフーチングを反力床に緊結せず,反力床に別途設置した鋼板とフーチングとのあいだに丸鋼を入れて浮き上がり時の回転中心を明確にするとともに水平反力を取った.

試験体No.1では基礎の浮き上がりが頂部変形角0.2%のときに発生し,変形角0.7%までに境界梁や1層RC柱の脚部の降伏が生じて崩壊形を形成した.頂部変形角1%で最大耐力に到達したのち,境界梁端部および基礎梁端部の曲げ圧縮破壊の進展とともに耐力が徐々に低下した.試験体No.2では頂部変形角0.3%のときにRC側柱の全主筋が引張り降伏し,変形角1%のときに境界梁が曲げ降伏して最大耐力に達した.その後,RC側柱のコンクリート圧壊が顕著に進展するとともに主筋の破断が断続的に発生して耐力が急減した.連層ブレースの浮き上がり回転によって決定された耐力は,境界梁および基礎梁の曲げ戻し効果を考慮した計算法によって評価できた.両試験体の鉄筋コンクリート部分および鉄骨ブレース部分の挙動の詳細な分析や変形性能の評価は今後,行なう予定である.

(3) 鉄筋コンクリート部分骨組における等価粘性減衰定数の定量化

梁主筋を通し配筋した十字形柱・梁部分骨組のエネルギー吸収性能を評価するために,地震力を受けた際の復元力履歴特性から等価粘性減衰定数を求めて,その定量化を試みた.梁主筋の降伏が先行した十字形柱・梁接合部試験体を既往の実験研究から108体選定して,層せん断力と層間変位との履歴曲線から等価粘性減衰定数を調べた.柱・梁接合部内における梁主筋の付着性状が劣化するほど等価粘性減衰定数は減少し,変位の塑性率の増加とともに等価粘性減衰定数は増大することを確認した.そこで,柱・梁接合部内平均付着応力度の存在し得る最大値を付着強度で除したものを付着指標と定義して,付着指標および塑性率を変数とした重回帰分析から等価粘性減衰定数を定量化した.建築基準法告示による限界耐力計算法で提示された等価粘性減衰定数は,塑性率4程度での繰り返し載荷による梁主筋付着劣化を想定すると過大に評価されることを,提案法との比較によって指摘した.

(4) 圧着接合されたプレキャスト・プレストレストコンクリート柱・梁接合部のせん断伝達機構

プレキャスト・コンクリートの柱および梁部材を,通し配筋したPC鋼材に緊張力を導入することによって圧着接合する工法がある.このような圧着接合によって組み立てられたプレストレストコンクリート柱・梁接合部部分架構試験体8体に正負交番繰り返し載荷する実験を昨年度に実施した.内柱・梁接合部の左右の梁危険断面におけるコンクリート圧縮分布の高さ(圧縮域深さ)が梁せいの1/2を超える場合には,接合部中央に水平な一軸圧縮応力場が形成されるため,この分の圧縮力は接合部内のせん断伝達には寄与しない.接合部せん断破壊を生じた試験体に対して,この現象を考慮して接合部入力せん断力を算定した.その結果,圧着接合されたプレストレストコンクリート内柱・梁接合部のせん断強度はRC柱・梁接合部のせん断強度評価法によって妥当に評価できた.また,PC鋼材を柱外に設置した鋼板によって定着した外柱・梁接合部においても,梁危険断面でのコンクリート圧縮域深さと定着板との位置関係によっては接合部内に水平な圧縮応力場が形成され,梁付け根からの圧縮力の一部は接合部内でのせん断伝達に寄与しない可能性があることを指摘した.

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