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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2001年度研究成果

(1) ポリビニル・アルコール短繊維を混入した鉄筋コンクリート柱のせん断性能

従来のコンクリートは引張りに対して弱いため,ひびわれ発生後の引張り応力伝達を期待できない.そこで引張り応力に対して靭性を賦与するためにビニル短繊維をコンクリートに混入した場合の鉄筋コンクリート柱のせん断性能を実験によって調査し,せん断抵抗機構を検討した.試験体は全6体で一辺250mmの正方形断面とし,せん断スパン比を1.5とした.その結果,以下の結論を得た.1) ビニル短繊維はかぶりコンクリートの剥落を防止し,またひびわれ幅を抑制した.コア・コンクリートを拘束する効果によって,せん断耐力を増加させた.2) 斜めせん断ひびわれ発生後もビニル短繊維のブリッジング作用によって,コンクリート引張り強度の半分の引張り応力を伝達でき,せん断耐力の増加に寄与した.3) 圧縮軸力下において,短繊維混入はトラス機構には寄与しなかったが,最大耐力後のアーチ機構の維持に役立った.これは短繊維がコア・コンクリートを拘束することによって,コンクリート圧縮強度の低減を抑制したためである.4) 短繊維の混入によって最大耐力後の靭性能が改善された.

(2) 連層鉄骨ブレースの浮き上がりを生じる鉄筋コンクリート立体骨組の地震応答性状

連層ブレースを含む鉄筋コンクリート立体骨組を対象として静的漸増解析および地震応答解析を行い,鉄筋コンクリート柱の軸力変動,鉄骨縦枠の性状,連層ブレースに取り付く直交梁の拘束効果および鉄骨ブレース脇のRC柱における基礎の浮き上がりが建物の耐震性能に与える影響について検討した.典型的な3階建てRC学校校舎(桁行き方向5スパン,張間方向2スパン)を対象として,建物中央部に連層ブレースを設置した.解析では基礎下部に地盤バネを設置して連層ブレースの浮き上がりを再現した.弾塑性立体骨組解析はプログラムCANNY-Eによって行なった.直交梁の拘束効果により連層ブレースの負担せん断力が増加し,骨組全体の耐力は15%上昇した.鉄骨縦枠が引張り軸力を負担することによって,タイプ3の破壊耐力は略算値よりも24%増大した.二方向静的載荷時には直交梁の拘束効果が増大し,基礎浮き上がり発生時の1層の層間変形角が一方向載荷時と比べて,最大で10%増大した.兵庫県南部地震(1995)による地震動(JMA Kobe)を用いた二方向地震応答解析では,浮き上がりを生じた連層ブレース脇のRC柱の1層柱脚における最大曲げモーメントは軸力変動の影響によって,一方向載荷時と比べて桁行き方向で2倍増加し,梁間方向で3割減少した.

(3) 加力方向が異なる鉄筋コンクリート柱のせん断性能の比較

昨年度に柱2本を有するRC立体部分フレーム試験体の三方向静的加力実験を行ない,水平二方向せん断力と変動軸力とを同時に受ける柱の破壊性状を検討した.本年度は,立体試験体と同一の柱試験体2体に一方向正負交番繰り返し載荷する実験を行い,力学特性の比較を行なった.試験体の断面は35cm×35cm,内法階高は170cmである.実験は柱頭・柱脚に逆対称曲げモーメントを与えることにより実施した.内柱に対応する試験体には一定軸力を,外柱に対応する試験体には引張りから圧縮まで変動する軸力をそれぞれ与えた.柱試験体は2体ともせん断破壊した.せん断ひびわれは柱試験体では柱全体に発生したのに対して,立体試験体では柱中央に集中した.これは,立体試験体の柱では反曲点の位置が内法階高中央よりも上昇して,逆対称曲げモーメントを与えた柱試験体とは異なる応力状態となったためである.水平二方向せん断力を受けた立体試験体の柱のせん断強度は,内柱では一方向載荷の柱試験体に較べて22%低下し,外柱では14%低下した.

(4) 圧着接合されたプレキャスト・プレストレストコンクリート柱・梁接合部の破壊メカニズム

プレストレストコンクリート架構としての復元力特性を把握し,設計に必要な基礎データを得ることを目的とし,プレキャストの鉄筋コンクリート柱と梁をPC鋼材で梁にプレストレスを導入することによって圧着接合させた内柱・梁接合部試験体6体の静的正負交番繰り返し載加実験を行った.その結果,すべて試験体の梁の変形は,目地部の局所的な変形であり,付着のない試験体は最後まで高い原点指向性を示したが,付着のある試験体では,初めに原点指向性を示した後,徐々にRC架構に近い紡錘型の履歴を示すようになった.
プレキャストの鉄筋コンクリート柱および梁をPC鋼棒で圧着接合して組み立てた骨組を対象として,柱・梁接合部のせん断抵抗性能を検討するための部分骨組実験を実施した.異形PC鋼棒を用い,梁コンクリート強度を柱コンクリート強度の2倍とした内柱・梁接合部および外柱・梁接合部はせん断破壊した.PC鋼棒の測定引張り力を用い,さらに左右の梁危険断面におけるコンクリート圧縮域の重複を考慮して接合部入力せん断力を求めた結果,従来のRC柱・梁接合部のせん断強度評価法を準用して算定したせん断強度と一致した.

(5) 柱と基礎梁が結合された杭接合部の破壊性状と耐震性能

兵庫県南部地震では,杭基礎にも多くの被害が発生し,その約70%は杭頭部で約10%は地中部で生じていると報告されている.杭の被害状況から,慣性力による被害は杭頭部に集中しており,地盤変形による被害は杭地中部の地層が急変する部分に発生したと考えられる.また,杭頭部は一般に上部構造と緊結されていることで,上部構造からの圧縮力や引張力,せん断力や曲げモーメントなどの複合した応力が集中して発生する.そこで本研究では,柱・基礎梁・杭の十字型接合部の試験体を作製して地震力を模擬した静的正負交番載荷実験を実施することによって,杭頭の破壊モードを対象として破壊に至る過程や力学特性を詳細に調査するとともに,接合部内の応力伝達メカニズムを解明し,基礎梁の設計方法に関して定量的評価を行うことを目的とする.あわせて,地盤を考慮した立体骨組に3次元地震力を入力させる非線形地震応答解析を実施して,柱・基礎梁・杭接合部の実験結果を立体骨組へ拡張させて考えるための資料とし,合理的な設計法を提案する.中低層の建物の基礎に多く用いられている既製杭を対象として,実物大の約1/2に縮小した柱・基礎梁接合部に杭を結合させた試験体を設計する.柱断面は35cm×35cmとし,杭は杭径300φのPHC杭を使用する.実験変数としては,基礎梁の断面と鉄筋量とする.
研究テーマ
研究成果


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