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北山研究室の研究成果
研究方針 □ 2000年度研究成果

(1) 軸力および2方向水平力を受ける鉄筋コンクリート柱・梁接合部のせん断性状

鉄筋コンクリート骨組内の柱と梁との交差部(柱・梁接合部)には、地震動による3方向外力によって複雑なせん断力が作用する。しかし、立体骨組において柱・梁接合部のせん断破壊が先行する実験研究は少なく、検討は不十分である。このような立体骨組接合部の破壊性状を検討するために、梁主筋の定着性能を変数として鉄筋コンクリート柱・梁部分架構試験体2体(実物の約1/2スケール)に軸力および二方向水平力を加える実験を行った。1体では梁主筋の危険断面位置に定着鋼板を設置して梁主筋の定着力を直接に接合部パネル・コンクリートに伝達できるようにした。応力の流れを明解にするため、スラブは設けなかった。コンクリート圧縮強度は23MPaであった。また立体による効果を検証するために、昨年度に実施された平面柱・梁接合部試験体の実験結果と比較した。試験体は全て接合部のせん断破壊によって耐力が決定した。検討の結果を以下に述べる。1) 一方向加力時の最大耐力は、梁危険断面位置に定着鋼板を設置すると約10% 増大し、加力された直交梁が付くことにより30% 以上増大した。2) 定着鋼板が接合部コア・コンクリートの面外膨張を拘束したため接合部耐力は増大したが、一方で、定着鋼板は接合部内梁主筋の付着性能を劣化させる要因になった。3) 架構の違いにより最大耐力に差が生じたのは、直交梁が接合部パネルの膨張および損傷を抑制したためである。接合部パネル膨張に対する直交梁の拘束力は、加力方向に生じる引張り鉄筋力の1/4程度であった。4) 立体架構における二軸せん断力下の接合部せん断強度は矩形相関曲線の外側に位置した。すなわち、各構面のせん断応力に対して独立に設計することで、任意方向のせん断力に対して柱・梁接合部を安全に設計することができる。

(2) 3方向地震力下での鉄筋コンクリート柱および柱・梁接合部のせん断破壊過程の究明

実際の鉄筋コンクリート骨組の地震時挙動をできるだけ忠実に再現するためにRC立体部分フレーム試験体の3方向静的加力実験を行ない、水平2方向せん断力と変動軸力とを同時に受ける柱あるいは柱・梁接合部の破壊性状が骨組全体の挙動に与える影響を解明することを目的とした。試験体は実物の1/2スケールを持ち、中層建物の最下層のうち隅柱と側柱の2本を東西および南北両方向の梁反曲点位置と2層柱の中央とで切り出した部分骨組2体である。柱のせん断破壊あるいは柱・梁接合部の破壊がそれぞれ先行するように1体づつ設計した。柱断面は35cm×35cm、梁断面は25cm×38cm、梁スパンは300cm、階高は189cmとした。2本の柱脚は剛強なスタブに固定し、上柱の加力点位置はピン支持、各梁端はピン・ローラー支持した。また両柱のあいだにある梁にはせん断力および軸力を測定するための鋼鉄製分力計を設置した。鉄筋コンクリート梁試験体に分力計を組み込んだ実験を予備的に行なったところ、純RC試験体と同等の性能を示し、作用する応力も十分な精度で検出できることを確認した。骨組実験では、両柱に2方向せん断力を与えるとともに、地震力の方向にあわせて軸力を引張りから圧縮まで変動させた。実験では両試験体とも想定した破壊を生じた。実験結果の詳しい検討は来年度に行なう。

(3) 繊維混入コンクリートを用いた鉄筋コンクリート柱のせん断性能

従来のコンクリートは引張りに対して弱いため、ひびわれ発生後の引張り応力伝達を期待できない。これに対して、コンクリート内に鋼繊維などを適切に混入することによってひびわれ後の変形性能を維持させることが可能である。本研究では次世代型の鉄筋コンクリート構造として、引張り応力に対して靭性能を賦与できる繊維混入コンクリートを使用することを試みた。具体的には長さ30mmのビニロン繊維を混入したコンクリートを用いるRC柱のせん断性能を、逆対称曲げせん断実験によって検証した。試験体は全6体で正方形断面(一辺250mm)、せん断スパン比(1.5)、主筋量(16-D13)は共通である。実験変数はコンクリート種類(普通、繊維混入、軽量骨材)、コンクリート圧縮強度(40MPaおよび80MPa)、柱軸力(圧縮および引張り)およびせん断補強筋の有無である。ビニロン繊維は1%混入した。繊維を混入することによってせん断強度後の耐力低下は緩和され、変形の増大に伴うかぶりコンクリートの剥落は防止された。しかしせん断強度や破壊形式(圧縮軸力下ではせん断圧縮破壊と付着割裂破壊との混合)にはほとんど影響を与えず、繊維混入によるせん断補強効果は顕著には見られなかった。

(4) 連層鉄骨ブレースを含んだ鉄筋コンクリート立体骨組の力学特性

既存鉄筋コンクリート(RC)建物の耐震補強工法として、RC耐震壁や鉄骨ブレースの増設が一般的に行なわれている。これによって既存建物の破壊形式は大きく変化する。連層ブレースを設置した場合には、ブレースの引張り降伏・圧縮座屈のほかに、基礎の浮き上がり回転および引張り側柱の軸降伏による全体曲げ破壊(タイプ3の破壊と呼ぶ)を考慮する必要がある。本研究では連層ブレースの浮き上がり回転が生じる立体骨組を対象として、鉄骨縦材およびRC柱に発生する軸力、ブレースに取り付く直交梁の拘束効果などを非線形静的漸増載荷解析によって検討した。典型的な3階建てRC学校校舎(桁行き方向5スパン、張間方向2スパン)を対象として、建物中央部に連層ブレースを設置した。解析では基礎下部に地盤バネを設置して連層ブレースの浮き上がりを生じるようにした。弾塑性立体骨組解析はプログラムCANNY-Eによって行なった。直交梁が連層ブレースの浮き上がりを拘束することによって骨組の水平耐力は1.2倍増大した。連層ブレースの負担せん断力は基礎の浮き上がり後も直交梁の拘束によって漸増した。ブレース脇のRC柱の軸力変動は1層が最も大きく、浮き上がりが生じる以前に引張り軸力を呈したが、最大でも全主筋引張り降伏に対して0.3倍程度の軸力であった。ブレースの鉄骨縦材にも全層に渡って引張り軸力が発生したが、その大きさはRC側柱の半分であった。鉄骨縦材は引張り降伏しなかった。

(5) 鉄筋コンクリート柱・梁接合部の破壊メカニズム

過去に実験された鉄筋コンクリート内柱・梁接合部試験体の結果を再検討して、柱・梁接合部パネルの変形性状と接合部入力せん断力との関係について論じた。接合部パネルは破壊の進行とともに横方向に大きく膨張した。一方、接合部内を通し配筋される梁主筋の伸び量は、接合部パネル・コンクリートの横変位に比べて非常に小さかった。このため、梁主筋とコンクリートとのあいだには相対変位が生じて、梁主筋にはコンクリートから付着作用を介して引張り力が付加される。そこで鉄筋の引き抜き試験による付着特性を利用して、接合部膨張による梁主筋の付加引張り力を定量化した。この付加引張り力は接合部入力せん断力には寄与しないので、部分架構に水平力を載荷したときに梁主筋に生じる引張り力から除去することによって接合部入力せん断力を算定した。その結果、接合部入力せん断力は部分架構の層せん断耐力時以降に低下する傾向を示した。層せん断力と接合部入力せん断力とが同時に低下し始めたことから、柱・梁接合部のコア・コンクリート圧壊に伴うパネル破壊が部分架構の層せん断力低下を引き起こしたと判断できた。
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研究成果


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