Reports

Commemorating the10th anniversary of Jacques Derrida’s death(2014年9月27日、上海交通大学

西山雄二



2014年9月27日、上海交通大学にて、「デリダ没後10年記念国際会議」が開催された(主催:同大学哲学科、欧州文化高等研究院)。上海交通大学は、グローバルな大学競争の指標として通用している「上海大学ランキング」で有名な大学。欧州文化高等研究院は、2011年に創設されたばかりの研究院だが、すでに、アクセル・ホネットやジュリア・クリステヴァを招聘研究者に迎えるなど、英語・ドイツ語・フランス語圏との哲学の交流を急速に展開させてきた。
http://iasec.sjtu.edu.cn/EN/Default.aspx




欧州文化高等研究院長のGAO Xuanyang氏は、1983年に国際哲学コレージュが創設された際に、デリダに呼ばれて中国思想のセミナーを担当した人物。

冒頭で哲学科長FENG Jun氏がスピーチをして、2001年9月にデリダが上海に招聘されたときのエピソードを披露した。デリダは知識人・王元化(WANG Yuan Hua)との対話で、「西欧のような哲学は中国には存在しない、中国思想があるだけだ」と発言して論争になった。FENG Jun氏からすれば、デリダの発言はヘーゲル主義的な無知、西欧言語に依拠しない哲学を認めない態度に映ったらしい。当時、デリダの発言はこの刺激的な箇所だけがクローズアップされて喧伝され、物議を醸し出したらしい。


(デリダの中国講演録『德里达中国讲演录』、中央编译出版社、2003年。問題の対話、「哲学与思想之辨――王元化谈与德里达的对话」が収録されている。)

今回の会議はフランス2名、ドイツ1名、台湾2名、日本2名、中国5名という多様な構成。おもに哲学と政治思想をめぐって、発表主題も多岐にわたり、バランスのとれたプログラムだった。







クリストフ・メンケは主体性と成功の論点からのデリダとアドルノの比較をおこなった。ジゼル・ベルクマンはデリダにおけるユダヤ性をめぐって、不可能なもの、アポリア、ダブルバインド、散種といったデリダの脱構築の因子として、自己における他性のユダヤ的経験があると主張した。カルロス・ロボは、デリダの現象学を考察するには、アーカイヴ性の現象学の論点が不可欠として、アーカイヴの亡霊性を強調した。夏可君はデリダの未来を構想するために、その喪の思想を明快に分類・整理し、DENG Gangはデリダとベルクソンの思想的対話の可能性を推論した。日本から参加した藤本一勇はデリダにおける技術論とテクスト論の二重の重要性を考察し、西山雄二は晩年のデリダが示唆した「世界の終わり」をめぐる考察を披露した。シンポジウム全体を通じて、中国のヨーロッパ思想研究、そして、人文学研究の勢いを感じさせられた。



デリダ著作の中国語翻訳は主要なものがわずか10冊程度。1990年代末から翻訳が急増。困難なフランス語表現に関しては、日本語と同じく造語で対応している。

--

--

-

声音与现象(声と現象),论文字学(グラマトロジーについて), 书写与差异(エクリチュールと差異), 多重立场(ポジシオン), 多义的记忆(メモワール), 友爱的政治学(友愛のポリティックス), 论好客(歓待について) そして, この本は中国でどう読まれただろうか, 马克思的幽灵(マルクスの亡霊たち)