セラピストにむけた情報発信



話し言葉でメッセージを伝えるためのtips:
放送大学の教材作りから学んだこと(その2)

 


2013年9月17日

今回は前回と同様,「話し言葉でメッセージを伝えるためには,どのような点に気をつければよいか」について,元NHKアナウンサー杉山英昭氏から教えていただいた知識をご紹介します.

・「話す呼吸」で文章にする

「完璧に準備された読み原稿は,言いよどみもなく繰り返しもないという意味で完璧だが,聴いている人にそのメッセージがつたわないことがある」というのが,ここでのメッセージです.つまり,論文のような書き言葉で作られた原稿には,普通の会話であれば当然はさまれるはずの呼吸(いわゆる間)が無視されるため,聴き手がついていけないということです.

“話す呼吸”で文章にするための具体的な方法として,杉山アナウンサーがご紹介くださったのは,会話にある“無駄”を有効利用するという方法でした.

杉山氏が例示した2つの文を見比べてください.
(1) この雨は,明後日まで続く.
(2) この雨は,明日,明後日まで続く.

論文であれば,明らかに(1)が選択されるべきです.「明後日まで続く」の中には,「明日も続く」ことが含まれるため,(2)は冗長な表現となってしまうからです.

杉山アナウンサーは,話し言葉の場合,(2)が選択されるべきだといいます.

以下は,杉山アナウンサーのご説明を引用したものです(一部改変引用).
「言葉の繰り返しや引用などの,一見無駄ともいえる部分は,よく伝わるためのツールになり,表現力を増しています.自分の言葉で話そうとしているときには,この無駄を作っているはずです.」

10年近く前の話になりますが,現在の上司である今中國泰教授から,「樋口君のプレゼンは言いよどみがなさすぎる」という指摘をいただきました.当時はその本質がよくわかっていませんでした.今,ようやくその意味を100%理解することができました.

新しいことに挑戦することで,かけがえのない知識を得ることができた気がしています.こうした機会を提供してくださいました,大野木裕明先生(仁愛大学)に心より感謝申し上げます.

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