セラピストにむけた情報発信



話し言葉でメッセージを伝えるためのtips:
放送大学の教材作りから学んだこと(その12)

 


2013年9月9日

ここ数年にわたり,放送大学2014年度用の教材「心理学研究法」の作成に携わっています.

放送大学の教材ではテキストに加えて,テレビまたはラジオの教材を作成します.心理学研究法は,ラジオ教材です.いつもの教材作りとは随分と質の異なる仕事で神経を使いましたが,収穫も多くありました.

大きな収穫の1つが,「話し言葉でメッセージを伝えるためには,どのような点に気をつければよいか」についての知識です.

私も普段から,大学での授業や学会発表,講演を担当する身です.自分なりに話し言葉でメッセージを伝える際の心掛けていることはあります.ただし私の通常の授業や発表では,パワーポイントに基づく視覚的教材があります.視覚的教材があることで,話し言葉の完成度が100%でなくても,ある程度の情報が聴衆に伝わるという部分があります.

これに対してラジオ教材の場合,口から発する情報だけでメッセージを伝える必要があります.少なくとも私にとっては,経験が乏しいこともあり,とてもチャレンジングな課題でした.

放送大学では,初めて教材作りをする教員向けに,効果的な教材作りのためのセミナーを実施してくれます.その中で,長年NHKのアナウンサーとして活躍された,杉山英昭氏からのアドバイスはとても参考になりました.今回と次回の2回にわたり,知識の一端をご紹介したいと思います.

なお,タイトルにある“tips”というのは,「ちょっとしたアドバイス」という意味の英語です.「ルール」や「原則」というほど厳格なものではないけれども,知っておくととても便利といったニュアンスを伝えるのに利用しやすい英語表現です.



・話し言葉の1文は5秒以内.

一番重要と感じたことは,1文をできるだけ短くすることです.1文が一定以上長くなると,主語と述語の時間が空きすぎるために(日本語と英語の根本的な違いですね),メッセージが伝わりにくくなります.よってできる限り文章を分節化して,短くしていく必要があります.

杉山氏は,「3行5秒」という若きアナウンサー時代の教えをご紹介くださいました.昔はニュースで読む原稿はアナウンサーの手書きだったそうです.その際,B5の用紙に手書きで大きめに3行ぐらいで原稿を書くと,それを読む時間が5秒程度となるそうです.この長さが,最も話すメッセージとして伝わりやすいとのことでした.

映像や文字の助けがあれば,聴衆が「いったい今なんの話をしているのか」を文脈から判断してくれるため,多少長くてもメッセージは伝わるように思います.しかし話し言葉だけで勝負する場合には,聴衆が道に迷わないようにするために文章を短くする工夫があります.

話すメッセージを短くすることの重要性については,テレビの撮影協力の際にも強く感じます.テレビの中でも特にニュース番組などの場合,尺の都合があるため,長すぎる説明を受け入れてもらえません.収録型のインタビューであれば,言い直しが求められるか,使われないかのどちらかとなります.できるだけ最初に結論を述べ,その理由や補足情報を,接続詞や関係代名詞で結ぶ工夫が必要と感じます.

続きは次回ご紹介いたします.

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