セラピストにむけた情報発信



運動の多様性練習の効果1:一般知識




2012年2月18日

運動技術を習得する際は,同じ練習をひたすら繰り返すよりも(constant practice)と,若干のバリエーションを加えて練習させるほうが(variable practice),練習効果が長く持続したり(保持),練習の効果を類似する技術に応用しやすい(転移)ことが知られています.こうしたバリエーションを加える練習効果を,多様性練習の効果と言います.

次回,多様性練習の効果に関して従来とは少し変わった解釈を提案した論文を紹介する予定です. そこで今回はそれに先立ち,多様性練習に関する一般知識をご紹介しておきます.

多様性練習の効果は,初めて聞かれる方には意外にも思える効果と思います.実際,練習する立場からすれば,習得すべき動作をひたすら繰り返したほうが,1つの動作に集中できて,しっかりと習得できる実感を持てるように思います.しかしスポーツ科学領域における運動学習研究としては,1970年代以降,多様性練習の効果を示唆する研究が非常に多くあります.

多様性練習が効果的なのは,「複数の技術に共通するルールを学べるからだ」と考えられています.

「運動の記憶とは複数の技術に共通するルールの記憶である」という考え方があります(運動のスキーマ理論).この考え方に基づけば練習に多様性を加えたほうがこうしたルールを効率よく学べるため,たとえ練習中のパフォーマンスが同じ練習を繰り返した場合よりも悪かったとしても,練習した技術を長時間保持できることになります.

次回ご紹介する論文では,生態心理学の考え方に基づき,こうした説明とは異なる考え方が提案されています.具体的な内容は次回をお待ちください.



本学では2月19-23日にかけて,長野の戸隠高原にてスノースポーツ実習を実施します.私もスノーボード教習の担当として同行します.

私にとっては貴重な運動指導実践の機会であるとともに,スノーボードを通して視覚運動制御の問題に実践的観点から向き合う機会です.昨年度までとは違った新たな発見があれば,またこの場で紹介したいなと思います.

昨年度の報告はこちらをご覧ください

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